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土地の境界確定 素早く 所有者 返答なければ「みなし確認」 再開発・災害 備え 国交省報告書案 丁寧な周知必要に

 国土交通省は13日、土地の境界や面積を確定する「地籍調査」の迅速化に向けた報告書案を取りまとめた。所有者に調査への協力を求めても反応がない場合、一定の手続きを経て確認したとみなす仕組みを2024年度中にも整える。再開発や災害時の復興事業での土地取得を円滑にする狙いだ。導入には所有者への丁寧な周知が必要になる。  「自然災害の激甚化・頻発化を背景に地籍調査の重要性は一層高まっており、早期実施が急務」。13日に開かれた検討会で示された報告書案はこう強調した。  調査は想定よりも遅れており、面積ベースでの実施率は22年度末時点で52%どまり。19年度時点で57%としていた目標には達していない。  遅れる要因の一つが、所有者の確認を求める仕組みだった。省令では境界や面積を確定する場合、所有者による現地調査の立ち会いや図面での確認を必要としている。こうした協力が得られず境界が未定となった土地は22年度だけでも約9,200区画あった。  報告書案は、立ち会いの協力が得られず反応がない場合も調査を進められるよう「所要の措置を講ずるべき」と指摘した。  同省は、所有者に連絡しても返答がない場合、市区町村が特定の手順を踏めば所有者が確認したとみなす制度を設ける。報告書案は月内に正式決定し、国交省は年内に省令を改正。新制度を24年度中にも導入する。  新制度では所有者へ地籍調査の実施を確実に知らせることが重要になる。国交省は立ち会いの協力を求める通知を3回程度出し、少なくとも1回は書留などの方法をとることを想定する。  測量図など客観的な資料に基づいて作成した境界案の送付から20日間過ぎても意見がなければ、確認があったとみなす流れを検討しており、詳細を今後詰める。  一方、所有者から立ち会いへの拒否や境界案に同意しないという意思表示があれば新制度の対象とはせず、基本的に境界を定めないまま調査を終える。その後に境界を決める必要が生じた場合には、所有者らの費用負担で再度測量するなどの手続きを踏む必要がある。  13日の検討会で同省担当者は「(新制度の導入時に)問題が起こらないようマニュアルなどを整え、地域での説明も含め混乱しないようにしたい」と述べた。  所有者不明の土地でも、測量図などの資料がある場合は市区町村と法務局が協議し境界案を作成できる。資料がない場合でも、20年から市区町村が法務局に境界の特定を申請できるようになった。調査の加速に向け既存の仕組みを活用する。  地籍調査は円滑な土地取引や再開発の後押しとなるだけでなく、災害への備えとしても重要だ。調査が済んでいない地域では境界を巡るトラブルが起きやすく、復興事業で区画整理が必要になった場合に手間がかかることが想定される。  11年の東日本大震災当時、甚大な津波被害があった宮城・岩手の両県では実施率が90%前後に達していた。国交省によると、若手県釜石市の市街地復興事業では、地籍調査が済んでいたため、測量の必要がなく約1年の短縮につながった。  一方、1月発生の能登半島地震で多くの建物が損壊した石川県輪島市は、22年度末時点で地籍調査の進捗率が1%にとどまる。担当者は「震災前から調査の重要性は認識していたが、費用や人的リソースが乏しく手が回らなかった」と話す。  同地震では大きな地殻変動が生じた。国は経度・緯度の位置を表す三角点や、標高の基準となる水準点などの再測定を手掛け、地籍調査を含む復興・復旧事業の早期実施につなげる考えだ。 【地籍調査】  土地調査法に基づき土地の一筆ごとに面積や境界を確定させる手続き。登記簿に備え付けられた地図は明治時代の不正確なものが多く、国土調査法に基づき1951年から始まった。市区町村が主体となって現地調査や測量を行う。結果は登記簿に反映され土地売買や課税の基本情報になるため「土地の戸籍」ともいわれる。

日経 2024年03月14日朝刊

 

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