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不動産・住宅関連【新聞各紙記事スクラップ】

空き家問題 データで解決 AIも活用、所有者支える

 不動産運用のコンサルサービスを手掛けるヤモリ(東京・渋谷)は、地方で借り手や買い手が見つからない戸建てを購入し、修繕したうえで賃貸する事業を始める。蓄積データを活用し、埋もれた優良物件を掘り起こす。人口減に歯止めがかからず、各地で空き家問題は深刻さを増す。スタートアップがデータや人工知能(AI)で解決に挑む。  ヤモリは不動産を運用する個人向けのコンサルサービスを2021年に始めた。足元で有料会員数は約1,500人に上り、取得額ベースで計約50億円の物件を各地で運用している。データがたまったことから、自社で物件取得と貸し出しに乗り出す。  コンサルサービスの既存顧客や不動産会社から空き家データを集める。周辺の家賃状況などを基に独自システムで将来の損益とキャッシュフローを予測し、「再生」の可否を見極める。人口20万人以上の中核市を有望エリアに据える。  藤沢正太郎社長は「交通アクセスなどは良いのに、築年数や設備が古いというだけで敬遠されている物件は多い」とみる。取得後はファミリー層を主要顧客に想定し、和室を洋室に作りかえるといったリフォームを施す。連携するリフォーム事業者の協力を得る。  このほど三菱UFJ信託銀行や米ベンチャーキャピタル(VC)のメタプロップなどを引受先とする第三者割当増資で10億円を調達した。今後2年で150〜200軒の取得を目指す。その後は三菱UFJ信託とファンドを共同組成し、外部投資家からも資金を集める計画だ。  総務省によると、全国の空き家は18年時点で849万戸と20年間で1.5倍に増えた。人口減が進む地方で深刻化している。  相続された住居の活用法が見つからず、放置されるケースが多い。地方の中古物件は単価が安く、不動産会社も活用提案に消極的だった。  国土交通省が売却・賃貸をする際の課題を複数回答で調べたところ、回答者の42.3%が「買い手・借り手の少なさ」を挙げた。「住宅の傷み」(30.5%)や「設備や建具の古さ」(26.9%)を懸念する所有者も多かった。  野村総合研究所は全国の空き家が38年に最大で2,356万戸に達すると推計する。全住宅の3軒に1軒が空き家となる計算だ。対策は喫緊の課題で、政府や自治体が動き出している。そこに独自の技術やサービスを持つスタートアップが加わっている構図だ。  空き家の発生数を予測するAIシステムを手掛けるマイクロベース(東京・文京)は1月、空き家を売却するために適切な価格を予測するシステムを開発した。愛知県豊田市や東京都町田市と連携した。  実際に売却された物件と売り出し中の物件を合わせて約2,300軒分の情報をAIに学習させた。所在地や築年数、リフォーム状況などを踏まえ、販売価格に合わせた売却成功確率をはじく。実証実験では93%の精度で売却の成否を当てたという。  需要の変化を数値化することで適切な価格設定を促し、空き家の発生を抑える。システムは24年夏に不動産会社向けに発売する予定。愛知県と東京都以外にも対応できるよう、他のエリアのデータ学習を急ぐ。  別荘をサブスクリプション(定額課金)型で貸し出すSanu(東京・中央)は空き家を別荘として再利用する。今春までに兵庫県や長野県などで3棟を開設して計10棟体制にする。  レジャーに使うファミリー層やリモートワークをする会社員に人気だ。アプリで予約やチェックイン、チェックアウトなどを完結できる手軽さも受けている。稼働率は平日でも9割を超え、サブスクサービス全体の平均値(8割台)を上回る。  老朽化した空き家が増えると、景観が損なわれ、治安が悪化する恐れがある。雑草や悪臭など衛生面の懸念も大きい。スタートアップが有効活用を後押しできれば、所有者を支えるだけでなく、周辺地域の活性化にもつながる。

日経 2024年02月28日朝刊

 

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