不動産運用のケネディクスは2023年春にも賃貸戸建ての私募ファンドを組成する。今後3年で年金基金など長期運用の機関投資家からの資金受け入れや借り入れで2,000億円程度を調達し、累計投資戸数を約5,000戸まで拡大する。30代を中心に間取りの多い戸建てへの引き合いは強いとみており、管理体制も整えて賃貸戸建てを新たな投資対象に育てる。
ケネディクスの宮島大祐社長が方針を明らかにした。同社は「コレット」という名で新築の賃貸戸建てを手掛け、21年夏にファンド事業を始めた。ただ、現状は飯田グループホールディングスやオープンハウスグループなどから首都圏の賃貸物件を自社の資金で取得し、入居者を募って貸し出す形にとどまる。
新たな計画では23年春をメドに、運用期限がなく、投資家がいつでも解約できる「オープンエンド型」の私募ファンドを組成する。投資家は年金や生命保険などの長期資金を想定する。金融機関からの借り入れも含め、今後3年で2,000億円の外部資金の調達を目指す。「体系立てて大規模に運用する賃貸戸建ての私募ファンドは日本で初めて」(宮島氏)としている。
同社は22年9月末時点で賃貸戸建てを707戸取得している。資産規模は約300億円で、年内には累計投資戸数は1,200戸以上に増え、資産規模も500億円程度まで拡大する予定。自社で取得し入居者を集めた物件をファンドに組み入れるほか、調達資金をもとに住宅メーカーから新築物件を購入する。物件の投資額は年500億〜600億円を見込み、物件数は3年で約5,000戸まで増やす計画だ。
価格上昇が続く新築分譲マンションなどを受け、賃貸戸建ての注目は高まっている。「間取りの多さや広さに加え、駐車場が付いた住宅に住みたいという需要が多い」(市川悠投資第四部長)ものの、需要に応える物件は供給数が少なかった。マンションに比べ経年劣化が進みやすいなど、物件管理の難しさも課題だった。
新型コロナウイルスで働き方や住まいの在り方が多様化し、郊外の戸建て需要が一段と拡大した。宮島氏は「3〜4LDKで90〜100平方mの物件に月20万円前後であれば、子供と住みたい家族は多い」とし、賃貸戸建ての市場拡大を予想する。
米国では賃貸住宅に占める戸建ての割合が35%程度あるが、日本は1割未満にとどまり、市場の拡大余地があるとみている。ファンドに組み入れる物件数が増えることで、より効率的な管理ができることも期待する。
ケネディクスはオフィスビルや商業施設の上場不動産投資信託(REIT)を運用し、私募ファンドや私募REITも手掛ける。物流施設などと比べ賃貸戸建ての私募ファンドは国内で認知度が高くないが、新たな投資対象として訴求する。
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