アジアの不動産投資信託(REIT)や不動産株に資金が流入している。世界主要中銀の金融緩和観測を背景に金利が低下し、債券などより高い利回りを求める投資家が買っている。金利低下が個人の住宅ローン利用を促し、住宅や不動産価格の上昇も目立つ。ただ、中には過熱感が出ている市場もあり、当局が規制に乗り出すケースも出始めた。
S&Pの国別REIT指数(配当込み、現地通貨ベース)をみると、香港やシンガポールではいずれも2018年末から2割超上昇。グローバルREIT指数の上昇率(ドルベース、18%)を上回る。日本でも17日、東証REIT指数が07年10月以来の高値となった。
背景にあるのは世界的な金融緩和への転換だ。米連邦準備理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)による利下げ期待が強まるなか、アジアにも金利低下が波及。香港の10年債の利回りは昨年末に比ベ0.5%ほど下がった。相対的に利回りの高いREIT市場に資金が流れている。
香港でREITが好まれるのは「店舗などの家賃収入が安定的に入るため」(第一上海証券の葉尚志ストラテジスト)だ。世界景気の減速懸念が強まるなか「キャッシュフローが潤沢なのが強み」(葉氏)という。
時価総額が大きい小売り施設系のリンク・リアル・エステート・インベストメント・トラストは年初から2割以上上昇。増配が続く成長性が評価されている。
この銘柄に投資する三井住友DSアセットマネジメントの秋山悦朗シニアファンドマネージャーは「(中国本土への容疑者引き渡しを可能にする)条例改正案への大規模な反対デモが続くなか、成長性や安定性から買われている」と話す。
香港では住宅市況も堅調だ。土地が限られる香港では住宅不足問題がある。住宅開発を手がける恒基兆業地産(ヘンダーソンランド)や新鴻基地産発展(サンフンカイ・プロパティーズ)の株価も2割超上昇している。
シンガポールのREITも好調だ。18年には増資が嫌気されて落ち込んだ銘柄もあったが「物件取得の効果が今年になって出てきた」(日本の運用会社)という。
不動産そのものへの資金流入が目立つのはフィリピン。経済成長に伴う住宅やオフィス需要の増加などで市況が好調。国内外の金利低下基調も追い風に、不動産株指数は年初から上昇している。
不動産大手アヤラ・ランドは4月までに、フィリピン証券取引委員会にフィリピン初となるREITの上場を申請した。不動産のメガワールドなども相次いで上場検討を明らかにしている。
もっとも、不動産市況には過熱感を警戒する声もある。不動産価格が過度に上昇すれば、REITの物件取得が難しくなる懸念がある。香港では住宅ローンの基準となる最優遇貸出金利を引き下げる余地が小さく、住宅価格の大幅な上昇は難しいとの見方がある。
タイ中央銀行が4月から一部の住宅販売について借り入れ比率の規制を導入するなど、過熱を抑えようとする動きも出ている。
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