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不動産・住宅関連【新聞各紙記事スクラップ】

路線価 29都道府県で上昇 伸び率2.3%、2010年以降で最高 訪日客・再開発 押し上げ

 新型コロナウイルス禍からの不動産市況の回復が加速している。国税庁が1日発表した2024年1月1日時点の路線価は、29都道府県で平均値が上昇して、前年の25から拡大した。訪日外国人(インバウンド)の増加や各地で進む再開発、半導体工場の誘致が地価を押し上げた。  路線価は主要道路に面した土地1平方mあたりの標準価格で、相続税や贈与税の算定基準となる。全国平均は前年比2.3%の上昇で、伸び率は前年から0.8ポイント拡大した。コロナ禍前の20年の1.6%を上回り、比較可能な10年以降で最も高かった。上昇した都道府県数は前年の25から4増えた。横ばいは2県、下落は16県だった。  平均上昇率が5.8%と、全国トップだったのは福岡県だった。同県内の最高路線価は商業施設「福岡パルコ」周辺の福岡市中央区天神2丁目・渡辺通りだ。周辺ではビルの高さや容積率の規制を緩和する、市の再開発促進策「天神ビッグバン」が進行している。  コロナ禍で落ち込んだオフィス需要は回復局面にある。企業は単に出社重視の姿勢に回帰するだけでなく、福利厚生などの一環で好条件のオフィスヘの移転や拡張する流れが続く。  オフィスビル仲介の三鬼商事によると東京都心5区の空室率は21〜23年に6%台半ばまで悪化したが、足元の24年5月は5.48%と緩やかに回復している。24年は新規の供給が少ないという要因も支えになっている。  都市部ではマンションの需要も大きい。不動産経済研究所によると23年度の首都圏の新築マンションの1戸あたりの平均販売価格は7,566万円で、前年度比9.5%上昇した。東京23区に限れば、平均価格は1億円を超す。  訪日客など旅行需要の回復も追い風だ。日本政府観光局(JNTO)によると、23年の訪日客数はコロナ禍前の8割まで戻った。直近は24年3月から5月にかけて3カ月連続で客数は300万人を超えた。  上昇率が全国で2位だった沖縄県(5.6%)は全県で広く路線価が上がった。飲食店を中心に店舗賃料が伸びて、地価上昇につながった。リゾートホテルの開業が相次ぐ宮古島で、上昇が特に目立った。  23年は日銀の政策変更や米金利の上昇で、長期金利は上昇傾向にあった。金利が上昇すれば、一般的には借り入れが難しくなり、不動産の価格には下落圧力がかかる。ただ足元で不動産投資は堅調さを維持する。  三井住友トラスト基礎研究所の坂本雅昭投資調査部門長は「日本経済や企業への成長期待は高く、投資家は不動産の賃料も上昇すると見込んでいるため、金利の上昇が不動産価格に与える影響は小さい」と指摘する。  米MSCIのデータを三井住友トラスト基礎研究所が集計したところ、世界の不動産取引額に占める日本の比率は、24年1〜3月期に7%台まで高まった。  全国524の税務署別に最高路線価の上昇率をみると、上位には観光や半導体工場で活況の自治体が多く食い込んだ。前年比32.1%上昇した長野県白馬村が首位だった。スキー場への外国人観光客の増加で、周辺ではホテル開発が進む。26年以降には、シンガポールを拠点とする高級ホテル「バンヤンツリー」の開業も予定されている。  2位は熊本県菊陽町で24.0%上昇した。台湾積体電路製造(TSMC)の進出で人の流れが増え、住宅新築などが地価上昇の呼び水となっている。周辺ではJR新駅設置や大型商業施設の開業なども計画される。同町ではTSMCの国内第2工場も今年末から建設が始まる見込みだ。  外国人観光客に人気の「古い町並み」がある岐阜県高山市は17.8%上昇して4位だった。

日経 2024年07月02日朝刊

 

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