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不動産・住宅関連【新聞各紙記事スクラップ】

マンション工期3割長く 首都圏、10年で 人手不足、価格上昇要因に

 マンションが完成するまでの期間が長期化している。日本経済新聞の調査によると、首都圏の大規模物件の工期は10年で3割延びた。建設や設備工事関連の人手が不足しており、今後も長期化は続く見通しだ。販売価格の上昇にもつながる。  不動産助言会社のトータルブレイン(東京・港)がもつ物件データを基に、総延べ床面積1万平方m以上の大規模マンション1,097棟(最高階数は60階)の工期を調べた。2010〜25年度(24年度以降は完成予定を含む)に1都3県(東京、神奈川、埼玉、千葉)で完成した物件を対象にした。  24年度の平均工期は884日と、14年度に比ベ3割延びた。1棟当たりの平均延べ床面積も9%増えたが、100平方m換算でも3割延びた。「マンションは階数に3カ月を足すのが工期の目安だったが、今は10カ月足すのが常識」(トータルブレインの杉原禎之副社長)になっている。  工期が延びた主因は人手不足だ。職人の高齢化もあり、建設業の就業者数は23年に483万人と20年間で約2割減った。  24年4月から時間外労働の規制が厳しくなるのを見据えて、建設業界は働き方改革に取り組んできた。週休2日に相当する「4週8休」の導入も加速した。建設業の働き手の総労働時間は、働き方改革の議論が活発化した15年以降、1カ月あたり4%短くなった。  エレベーターなどの設置に必要な電気設備の作業員も不足している。日立ビルシステムは4月以降、建設現場の労働時間が減少することにより、同社の新設エレベーターの施工能力は24年度に前年度比6%(300台程度)減ると試算する。  国土交通省によると23年度の建設投資額見通しは13年度比5割弱増えた。建設業界はこの10年間、東日本大震災からの復興や東京五輪・パラリンピック関連など工事需要は強かった。建設会社が利益率の低いマンション工事を後回しにしがちだったことも、工期が長期化する遠因となった。  野村不動産でマンション開発に携わる建設管理担当者は「大規模物件は作業員数が限定されると一度にすべての棟を工事できず、工期の長期化につながる」と説明する。  工期が延びれば総人件費が増え、建設コストも上昇する。その結果、販売価格が上がる。不動産経済研究所(東京・新宿)によると、首都圏の新築マンションの平均価格は23年度に7,566万円と、13年度比で51%(2,558万円)上昇した。  残業規制の適用に伴って建設作業員が不足する「2024年問題」の影響は今後、本格化する。工期はさらに長くなる可能性が高い。25年度は1,042日と24年度よりさらに延びる見通しだ。  不動産調査会社、東京カンテイ(東京・品川)の高橋雅之主任研究員は「新築マンション価格は今後、年数パーセントのペースで上昇する」と予測する。

日経 2024年06月12日朝刊

 

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