静岡市は市内での農地集約や産業用地開発、空き家流通の促進に向けて8月にも一般財団法人を設立する。5日発表した2024年度6月補正予算案に出資金として30億円を盛り込んだ。新法人は地権者らの調整や売買仲介、需要開拓などを担う。民間の土地や空き家の利活用推進に特化した法人を行政主導で立ち上げるのは全国でも珍しいという。
新法人の名は「静岡市土地等利活用推進公社(仮称)」。難波喬司市長は設立の意義について同日、「企業の(静岡市への)進出や規模拡大の意欲はあるが、土地が用意できていない。静岡市は若年層の人口流出が激しく、魅力的な働く場をうまな
いといけない」と話した。
従来、24年度当初予算で25年4月に設立を予定していたが、「一日でも早く始めないといけない状況にある」(難波市長)として前倒しした。市が派遣する職員8人を含む10人の体制で始動する。
新法人は、農地の集約では小規模で点在する農地をまとめて大規模化し生産効率を高められるよう、地権者同士の意向確認や売買の仲介などを引き受ける。市によると05年に1万4,376人だった市内の農業就業人口が、20年には7,022人とほぼ半減した。高齢化も進み65歳以上の割合が6割に迫る。
市内の農地面積が9,861haであるのに対し、耕地面積は4,580haにとどまり「約5,000haが耕作放棄地などの未利用農地と推定できる」(難波市長)。こうした農地を集約し意欲のある農業従事者に任せることで生産性を高め、所得向上にもつなげる。市内の農業の活力を取り戻し、離農も食い止めたい考えだ。
産業用地の確保も目指す。農地集約により結果的に生じるなどした遊休地の地権者と、進出先を探す企業とを結びつけて立地につなげる。22年の工場立地件数は静岡県全体では52件だが、うち静岡市は4件にとどまる。同市企画課は「市の面積に対して企業立地に適した土地が少ないことが要因」と分析する。
市では23年度から市内の75エリアを対象に農地の集約や企業誘致の適地の選定を進めており、24年中をめどに5〜7エリアに候補を絞り込む予定だ。
急増する空き家の流通も促す。03年に2万7,330戸だった市内の空き家数は18年に4万7,900戸と約2万戸増えた。空き家率も03年の9.9%から18年に14.4%へと上昇している。市は「若い世代を中心に一定の住宅需要があるが供給は少なく、需給にミスマッチが起きている」(企画課)と見る。
新法人は空き家所有者から相談を受ける窓口を設け、活用できる空き家を掘り起こして不動産業者や入居希望者に紹介する。所有者が希望すれば新法人が空き家を借り上げ、入居希望者へ貸し出すサブリースも実施する。「所有者の負担やリスクを軽減し、賃貸物体としての流通を促したい」(企画課)とする。
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