首都圏の戸建て住宅の価格がじわりと上昇している。安定した需要や建築費の上昇などを背景に、首都圏の新築戸建て価格は3カ月連続で上昇した。マンションの高騰を横目に、戸建て市場では新築や中古の選択肢を広げながら吟味する消費者も増えているようだ。
不動産調査会社の東京カンテイ(東京・品川)がまとめた新築小規模戸建て住宅(敷地面積50平方m以上100平方m未満の新築木造一戸建て)の平均希望売り出し価格は、首都圏は前月比0.2%高い5,295万円。東京都は6,324万円と2.7%下落した一方、神奈川県が4.7%高い4,835万円となるなど全体が押し上がった。
首都圏全体でみた場合の上昇は3カ月連続。東京カンテイの藤谷有希研究員は「戸建ては実需層が急ピッチの価格上昇にはついていけない性質があるため、供給サイドも強く値上げしにくい。マンションに比べると小幅な上昇」と話す。投資需要が相場を押し上げることもあるマンションに比べれば、実需層が多い戸建ての値上がりはなお緩やかだ。
藤谷氏がもうひとつ注目するのは、中古の戸建て住宅に対する消費者の目線だ。「マンションの価格が高く、小規模な戸建てだと狭いので、中古戸建てに目を向ける買い手も増えてきている」と指摘する。
同社によると、4月の首都圏の中古一戸建て(敷地面積100〜300平方m)は前月比6.4%高い3,851万円。東京都は13.1%高い6,249万円。東京23区は9.6%高い1億1,169万円と11カ月連続で1億円台を推移している。目黒区や品川区などで高額事例が出て、価格をけん引する状況が続いている。
年単位でみても、戸建て住宅の価格の上昇がうかがえる。SUUMOリサーチセンター(東京・港)が、新築戸建てを購入・契約した人を対象に購入価格や購入理由などを聞いている調査では、首都圏の平均購入価格は23年に4,515万円と22年より109万円増え、調査を開始した14年以降で最高となった。
購入した世帯年収も814万円と過去最高となった。世帯主の年代は20代の割合が22年よりも増加。住宅ローン借入額も平均4,241万円と過去最高になったという。
住宅価格の変化を踏まえながら、消費者はマンションや戸建て、そしてそれぞれで新築や中古と選択肢を広げている可能性がある。
SUUMOリサーチセンターでは「住宅の購入や建築、リフォームを検討している人を対象に「住宅購入・建築検討者」調査(マンションも含む)も実施している。それによると、23年は検討している住宅の種別として「注文住宅」が56%と最も多いが、「中古一戸建て」が31%と19年以降で最も高くなった。
SUUMOリサーチセンターの池本洋一センター長は「マンションや戸建てはいずれも物件価格の上昇が続いており、現在居住している物件が高く売れることが見込まれる。そのため、物件を売り、今の居住人数にあわせた物件にその都度住み替えやすいマーケット構造になっている」と指摘する。
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