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不動産・住宅関連【新聞各紙記事スクラップ】

不動産融資最高に 節税アパート・REITで活況 昨年、新規に12.2兆円

 日銀が9日発表した「貸出先別貸出金」によると、2016年の金融機関による不動産融資は前年を15.2%上回る12兆2,806億円だった。統計を遡れる1977年以来で過去最高だ。地価上昇で不動産投資信託(REIT)向け融資などが増えた。「バブル」といえるような状況にはないものの、節税を目指したアパートの過剰建設などひずみも広がっており、金融庁・日銀は地方銀行などへの監視を強めている。  15年の不動産業向け新規融資の伸びは6%で、16年の伸びは2倍以上になった。新規融資全体でみると16年は10.4%増の48兆3,988億円と97年以来の高水準を記録し、これも4分の1を占める不動産向けが伸びの原動力になっている。  不動産向けの貸出残高は昨年12月末で70兆3,592億円と1970年3月末以降で過去最高だ。477兆9,094億円に上る総貸出に占める不動産の割合は15%だった。  追い風は地価上昇だ。国土交通省の調査によると高層マンションなどが集まる100カ所のうち16年10月1日時点で上昇は82カ所で下落はゼロだった。2020年の東京五輪をにらんだ都市開発や訪日客増の期待で土地の先高観が台頭。海外のヘッジファンドなどによる多額のマネーを呼び込み、銀行の不動産関連融資が膨らんだ。  16年に日銀がマイナス金利を導入したことで、運用難の銀行にとっても相対的に値上がり期待の高いREIT向け融資は魅力が増した。REITの時価総額は現在、12兆円程度で、マイナス金利政策を決めた16年1月末に比べ1割増えている。  大手銀は破綻した時に返済の優先順位が低い劣後ローンと呼ばれるややリスクの高い貸し付けなども増やすなど貸出先の開拓に躍起だ。不動産向けだけでなく、政府による公共事業増で商業ビルや宿泊施設関連などの融資が伸びたのも特徴だ。  個人の不動産投資も活発だった。16年の新規貸し出しで不動産と並び増加が目立ったのは個人向けで、前年比2割近く多い17兆7,119億円。一部は住宅ローン向けが押し上げたとみられる。  6件の賃貸物件を保有する建設会社勤務の男性(45)も今年、都内に新たな投資マンションを購入する予定。米金利上昇などで「超低金利には持続性はなく、今のうちに購入したい」と語る。  アパートなどの貸家建設も大きい。国土交通省の住宅着工統計によると、15年度は4年前よりも3割強多い38万3千戸に拡大。16年度は4〜12月だけで前年同期比12%近く多い33万戸に達した。  アパートを作ると課税する際の資産の評価額が下がり、相続税の節税効果が期待できる。もっとも「人口減社会で貸家の大幅な着工増は実需に見合わず、融資行動がいびつだ」(ニッセイ基礎研究所の上野剛志氏)と批判的な声も出ている。  ある日銀幹部は「不動産業全体では実需の裏付けがある」としつつも、「地方都市を中心に空室が増えると不動産価格の下落につながり経済にとってマイナスに働く」と警戒している。 ■過熱感 リスク置き去り 空室増え延滞懸念  不動産融資の伸び自体は経済活動が活発なことの裏返しだ。ただ地銀などの融資がアパートを含む不動産向けに偏重し過ぎれば財務の健全性を損ないかねず、金融庁などは不動産融資の動向に少しずつ警戒のレベルを上げている。  節税目的でアパート経営に乗り出す個人が増えている実情を踏まえ、同庁は将来、過疎などで空室が増え、返済が滞るリスクなどを銀行が適切に借り手に伝えているかを調べる。  アパート融資は2015年の税制改正で相続税の課税対象が広がったのを機に急増した。それまで相続税を納める必要がなかった人も広く対象に含まれるようになったことが背景だ。  節税目的とはいえ、人口が減るなかで過剰供給になれば、融資の返済原資である家賃収入が落ち込みかねない。建設請負業者が一定期間、家賃保証するのが一般的だが、空室率に応じて保証額が下がる契約になっている場合も多い。  アパートは新築のうちは入居者が多いが、年数がたつにつれて空室率が高まる。このまま供給が増え続ければ、返済負担に苦しむ個人が増えかねない。金融庁は「節税効果以上に融資の返済負担が重くなるような本末転倒のケースも増えかねない」(幹部)と警戒している。  もっともアパート経営を始めるのは一定規模の土地を所有している人が多く、銀行側からみればその土地を担保にした融資の貸し倒れリスクは小さい。日銀の黒田東彦総裁が昨年12月の記者会見で「金融機関のリスク管理上の悪影響が懸念される状況にはなっていない」と話したのはそのためだ。  金融庁幹部は「不動産向けと言っても千代田・中央・港の都心3区とそれ以外、都市部と地方で状況は異なる」と指摘。全国で地価が高騰したバブル期とは様相が異なるとみている。

日経 2017年02月10日朝刊

 

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