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不動産・住宅関連【新聞各紙記事スクラップ】

超低金利 個人の貸家経営急増 不動産融資バブル超え

 昨年の銀行の不動産向け新規融資が前年比15.2%増の12兆2,000億円となり、バブル期の10兆4,000億円を超えて過去最高になった。アパートなど貸家経営に乗り出す個人への「アパートローン」の急増が主因だ。背景には、預金にほとんど金利がつかず将来への不安が高まる中、超低金利で気軽に大金を借りて不動産に投資するサラリーマンが増加したことがある。一方、銀行が厳しい審査なしにお金を貸し込んでいるケースもあり、超低金利政策のゆがみが広がっている。  ■頭金も不要 「毎月入る家賃が年金の代わりになりますよ」。埼玉県内の会社員男性(38)は不動産業者に耳打ちされ、2010年から投資目的で東京都内でワンルームマンション一部屋を買った。  その後、所有する部屋を3つに増やした。1部屋の価格は2,000万〜3,000万円だが、業者が紹介する金融機関は購入のたびに全額を融資してくれた。無担保で頭金も不要。「拍子抜けするほど簡単に借りられた」。年収500万円台の男性のローン残高は、ピーク時に7,000万円を超えた。「流れ」が変わったのが昨年夏。保有していた3部屋のうち1部屋の「収支が悪くなった」と業者から報告があり、受け取る家賃を減らされた。市場では「貸家ラッシュ」で空室を抱えるアパートが増えていた。  もともとこの部屋の収支は月8,000円の赤字だった。「いずれ転売するから問題ない」と思っていたが、家賃の減額で今年4月から赤字は月20,000円に増えた。  リスクの高さに気付き、1部屋を売却した。残り2部屋も転売先を探すが、貸家が増え価格が下落。今の査定価格で売れても200万円程度の借金が残る。「自分に甘い部分があった」と男性。だが「業者や銀行の姿勢もおかしい」と憤る。  ■空室3割超 「銀行と不動産業者が組み、無理な融資をしている」。全国住宅ローン救済・任意売却支援協会(埼玉県所沢市)の佐々木延彦代表理事は説明する。協会への16年の相談件数は、前年と比べ6割も増えた。  16年の貸家建設戸数は、8年ぶりの高水準。首都圏では超低金利下で何とか収益を出そうと、地銀が営業活動を活発化。金融機関の関係者は「バブル期以外で、こんな状況は記憶にない」と話す。15年の税制変更で、相続税の課税対象者が全体の4.4%から8%に増加。相続税額対策のためにアパートを建てる人が増えたことも不動産融資の拡大につながった。  一方、不動産調査会社タス(東京)によると、アパートの空室率は東京都や神奈川県などで3割を大きく超える。愛知県も3割近い。人口減で空室が増え続け、価格がさらに下がる可能性もある。「今のようなプチバブルがはじければ、アパート建設に投資をしたオーナーの人生設計が狂ってしまう」と不動産アナリストはみている。 【需要に陰り収入減る】  日銀名古屋支店によると、東海地方の地銀など地方金融機関の不動産業向け貸出残高(昨年12月末)は約3億8,000万円に上り、前年比4.5%増。特に個人の貸家業向けが6.4%伸びた。人口が増えている愛知県などで貸家需要は高く、低金利を背景に貸家経営を始める人が増えているとみられる。貸家の着工戸数も増加傾向が続く。一方、東海地方のある金融当局者は「戸数の増加で競争が激しくなっており、貸家需要はいずれ陰りが出る恐れがある」と指摘。金融機関には将来の返済可能性を見極めて融資の審査をするよう求めている。  国民生活センターには、アパートローン返済の相談が東海地方からも寄せられている。30年間の家賃収入を保証する契約を結んだあるアパート経営者は「契約から10年過ぎた後は2年ごとに家賃が見直され、年間500万円ほど収入を減らされた」と訴えた。契約書には家賃が下がる可能性は明記されていなかった。「契約時の家賃がずっと続くと思っていた」という。  南関東の女性からは「(東海地方に住む)高齢の両親が5,000万円の融資を受けて賃貸マンションを建てる契約を結んだが、入居者が確保できるか心配」といった相談も。センターの担当者は「節税対策でうまい話に乗ってしまうケースが起こり得る」と、安易な貸家経営に警鐘を鳴らす。

中日 2017年05月01日朝刊

 

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