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不動産・住宅関連【新聞各紙記事スクラップ】

急回復のREITに転機 海外勢、指数採用の買い終了

 今年に入り急回復してきた日本の不動産投資信託(REIT)に転機が訪れつつある。上昇をけん引してきた、海外の株価指数への組み入れに伴う買いが終了するためだ。今後は金利上昇も逆風となる。海外勢に代わり、上昇相場で利益確定を終えた個人投資家の動向も注目を集めるが、当分上値が重くなるとの見方は多い。  東証REIT指数は年明けから上昇し、14日には2,157に達して年初来高値を更新。20年末からの上昇率は21%にのぼった。同期間の日経平均株価の6%高や東証株価指数(TOPIX)の9%高を大きく上回る。  けん引役は海外投資家だ。東京証券取引所の投資部門別売買状況によると、海外勢の5月のREITの買越額は378億円。買い越しは4カ月連続で、今年に入り累計で1,479億円を買い越している。金融機関が計264億円、個人が同885億円を売り越したのと対照的だ。  背景にはREITのグローバルな株式指数への組み入れがある。指数算出会社の英FTSEラッセルは20年9月、世界の機関投資家が運用のベンチマークとするFTSEグローバル株式指数に日本のREITの組み入れを開始。同指数に連動したパッシブ運用を手掛ける機関投資家は、組み入れ対象となったREIT銘柄を買い入れてきた。    組み入れの対象は東証上場全体の9割にあたる54銘柄。3カ月ごと4回に分けて段階的に組み入れ、1回あたり700億円程度、累計で3,000億円の資金が流入したとみられる。REITの1日の売買高が400億〜500億円程度のなかでインパクトは大きく、「資金流入による価格上昇を見込んだ先回り買いも入っていた」(大和証券の大村恒平シニアアナリスト)とみられる。  ただ、この指数組み入れは今月18日で完了する。「需給が緩み、上値が重くなる」(みずほ証券の大畠陽介シニアアナリスト)との見立ては多い。実際、17日の東証REIT指数は2,114と、14日の年初来高値から2%下落している。  コロナ禍からの経済回復の期待が先行しすぎだとの指摘もある。東証REIT指数を業種別に見ると、21年のホテル・リゾートは20年末から34%上昇(6月14日時点)と全体をけん引する。  ただ、観光庁の統計では全国の宿泊施設の4月の稼働率は32%と低迷が続く。野村アセットマネジメントの阪井徹史シニア・ストラテジストは「ホテルなどは期待先行から買いが入ってきた」と分析。経済回復が期待より遅いと失望売りにつながる可能性がある。  金利の上昇も逆風だ。米連邦準備理事会(FRB)は16日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で、ゼロ金利政策の解除時期を前倒しする方針を示し、日米の長期金利は上昇した。REITとの利回り差は縮小し、国債と比べリスクの高いREITの投資妙味は薄れる。金利上昇は資金を必要とするREITにとって借り入れコストが上昇し、収益の圧迫要因にもなる。  海外勢の旺盛な買いに支えられてきたREITの潮目が変わるなか、今後は個別銘柄の目利き力がより問われそうだ。

日経 2021年06月18日朝刊

 

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