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不動産・住宅関連【新聞各紙記事スクラップ】

オフィス型 再評価の機運 REIT、分配金に期待

 堅調な不動産投資信託(REIT)市場で、オフィス型を再評価する機運がじわりと広がっている。新型コロナウイルスの影響による稼働率の低下に一足早く歯止めがかかったことで、中小型オフィスで構成するREITの投資口価格の上昇が目立つ。物件売却益が膨らむ大型オフィスREITでは分配金への期待が高まっている。  「中小型オフィスREITの買い持ち高を少しずつ増やしている」。しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹運用本部長はこう話す。  中小型オフィスREITは2021年に入って買われ始め、投資口価格の上昇率はいちごオフィスリート投資法人が26%、サンケイリアルエステート投資法人が21%となり、東証REIT指数(16%)を上回る。20年はコロナ禍で業績が悪化した中小企業がオフィス解約に動くとの懸念から売り込まれていた。  買い材料となったのは、オフィスの中でも中小規模の需要が復調となっていることだ。テナントの解約はピークアウトしたとの見方が優勢で、設備などの面で在宅勤務が進まない中小企業では小規模オフィスの需要が増えている。  新興企業も旺盛で、オフィス仲介大手の三鬼商事(東京・中央)によると4月までに東京都心4区(千代田、中央、港、新宿)の空室率が軒並み上昇する中、IT(情報技術)系のスタートアップが集まる渋谷区は2月以降、低下が続く。同地区は人気で賃料下落を好機とみる企業が増えている。  出遅れる大型オフィスREITも、分配金への期待から注目されている。ニッセイ基礎研究所によると、20年のREIT保有物件の価格は19年と比べほぼ横ばいで、下落が顕著だった08年のリーマン・ショック時と対照的だ。  「海外マネーが不動産市場を下支えしている」とニッセイの岩佐浩人金融研究部不動産調査室長は指摘する。REITが保有物件を売却すれば利益を確保でき、分配金が増えるとの思惑が広がる。3月には日本ビルファンド投資法人が含み損を抱えていた東京・南青山の物件を、簿価を上回る価格で売却した。  REITによる物件売却は活発で、SMBC日興証券の集計では5月19日時点で売却額は1千億円超とすでに20年並みの水準に達している。17日に決算発表したジャパンリアルエステイト投資法人は14期連続の増配を維持し、来期の1口当たり分配金予想も上方修正した。SMBC日興証券の鳥井裕史シニアアナリストは「売却益が膨らんだ大型オフィス銘柄のさらなる投資主還元が期待できる」と指摘する。  主要投資家である海外投資家、投資信託の動きは活発だが、気がかりなのは地銀の動向だ。国内証券のトレーダーは「東証REIT指数が2千ポイントを超えたあたりから地銀の売りが目立ってきた」と話す。ある地銀の運用担当者は「REIT全体で平均3%超の分配金利回りは魅力的でインフレヘッジにもなるが、オフィス全体の空室率は高く、まだ買いづらい」と二の足を踏む。  足元の東証REIT指数は20年2月の高値2,250台から、まだ8%ほど低い水準にある。国内REITの時価総額比率で4割を占めるオフィス型が本格復調すれば、市場全体の回復につながる。20年まで市場を支えた日銀のREIT買いは実質的に消滅し需給面での支えが消える中で、もう一段の上昇には地銀勢の強気への転換が条件になりそうだ。

日経 2021年05月21日朝刊

 

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