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不動産・住宅関連【新聞各紙記事スクラップ】

REIT、株波乱でも堅調 地銀、分配金増で買い意欲

 不動産投資信託(REIT)相場が底堅い。総合的な値動きを示す東証REIT指数は2020年末比で1割のプラスだ。経済の回復期待や分配金の安定感が株価乱高下や金利上昇という悪材料への耐久力を高めている。  「やっぱり3%を超える分配金利回りが魅力的ですね」。西日本の地銀の運用担当者は、新年度に上場REITを買い増す方針だ。  東証REIT指数が株安に引きずられてほぼ半値まで急落したコロナショックから約1年。主要な買い手である地銀が最近REITを見直しているのには3つの理由がある。  1つ目は株式に対する出遅れ感だ。20年11月以降、米大統領選の不透明要因が後退して株高が進んだが、日本のREITは放置された。オフィスビルで運用する銘柄が多く、空室率の上昇懸念などが重荷となった。  それが年始以降、新型コロナウイルス向けワクチンの接種開始などを材料に世界的に経済回復の期待が台頭。REITにも復調を見込んだマネーが向かい、日本や米国でREIT相場の上昇が強まった。  2つ目は分配金の安定感だ。東京証券取引所に上場するREIT全体の1口あたりの平均分配金はコロナ禍さなかの20年もむしろ増加し、下期には過去最高を記録した。集計したSMBC日興証券の鳥井裕史シニアアナリストは「物件の修繕計画の見直しなどコスト削減策や、物件売却益の投資家への還元が進んだ」と分析する。  例えば時価総額2位のジャパンリアルエステイト投資法人は同9月期に分配金を前の期に比ベ652円増の1万1,262円とした。テナントに対する賃料支払い猶予があったが稼働状況は想定の範囲内にとどまり、物件の取得や修繕費の減少で増配につなげた。  投資家は「分配金の安定感から利回り資産としての信頼は強まる」(三井住友DSアセットマネジメントの秋山悦朗チーフファンドマネージャー)という。コロナ危機でいっとき高まっていた株式との相関係数は再び低下し、本来の姿を取り戻しつつある。  3つ目は私募の不動産ファンドとの比較。三井住友トラスト基礎研究所の調べでは、私募不動産ファンドの利回りは昨年6月時点で半年前より1.1%低下して5.1%となった。一般に解約までに時間がかかり市場環境の変化に対応しにくい面があるが「最近営業に来る私募ファンドの利回りは4%台が多く、上場REITと大差なくなった」(地銀)。  足元では米長期金利が一時1.6%を超えるなど世界的に金利上昇傾向がみられる。金利の上昇局面では通常、分配金利回りの魅力が薄れてREITは売られやすい。2月26日に東証REIT指数は2,000の大台を前に反落した。  相場復調を受けて一部のREITが公募増資に踏み切る可能性も取り沙汰される。質の低い物件の取得を強行すればマーケットを冷やしかねず「増資のハードルは高い」(みずほ証券の大畠陽介シニアアナリスト)。  それでも、経済の回復や分配金の安定感に対する期待は強い。東日本の地銀の担当者は「成長性の高い物流施設系や、価格が割安なオフィス系の銘柄に押し目買いを入れるタイミングを計っている」と明かす。利回りを求めるマネーは厚みを増し、値固めの展開となる可能性がある。

日経 2021年03月02日朝刊

 

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