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不動産・住宅関連【新聞各紙記事スクラップ】

賃料減免 REITに影 ホテル系最大手、分配金98%減 商業施設に波及も

 新型コロナウイルスの影響で、家賃の減免交渉に乗り出す企業や個人が増えている。不動産を保有して賃料などの収入を投資家に分配する不動産投資信託(REIT)では、ホテル系の最大手で実際に免除に応じる例が出てきた。投資家が受け取る分配金が大幅に減り、投資口価格(株価に相当)は急落した。減免の動きは商業施設などにも広がりかねない。  先週の東京市場では、ホテル系REIT最大手インヴィンシブル投資法人の投資口価格が24%下落した。2020年6月期の1口あたり分配金の予想を30円としたためだ。19年12月期の1,725円に比べ98%減る。  分配金減額の理由は、ホテル運営会社マイステイズ・ホテル・マネジメント(東京・港)の支援にある。マイステイズはインヴィンシブルが国内で保有する83ホテルのうち73を運営し、同REITに賃料を払っている。新型コロナの影響で宿泊客が減り、賃料を払えな くなった。  両社の交渉の結果、賃貸契約を変更し、3〜6月分の固定賃科を免除する。さらに、同REITが建物の管理費なども支援する。同REITの収入は急減し、投資家への分配金を減らさざるを得なくなった。  REITに限らず不動産業界では、新型コロナの影響でテナントの収入が減った場合に、家主も賃料を減免して負担を負うべきかが大きな問題になりつつある。宿泊需要が「蒸発」したホテル系のREITで、いち早くこの問題が表面化した。  REITに特有な事情もある。インヴィンシブルもマイステイズも、米投資ファンド、フォートレス・インベストメント・グループ傘下だ。  フォートレスはこの2社を活用してホテル投資を拡大してきた。訪日外国人が急増し始めた13年ごろから、各地のホテルを次々に買収し、運営をマイステイズに変更。稼働が安定したら物件をインヴィンシブルに売却し、投資資金を回収した。  インヴィンシブルは19年末にホテルの資産額がREITで最大の約4,300億円になった。資産拡大に伴い、分配金は6年間で7倍弱に増加。投資口価格も3倍強と比較可能な銘柄でトップだ。  フォートレスは2社を一体運営し、これまではインヴィンシブルの拡大を重視し、投資家も恩恵を受けてきた。今回はマイステイズの経営支援を優先し投資家の負担が増える。フォートレス側もマイステイズに13億円を追加出資する。ただ、ある地銀の運用担当者は「マイステイズの財務状況がどこまで苦しいかは非上場のため見えにくく、REITの投資家は負担が合理的か判断が難しい。フォートレスがもっと身銭を切ってもいいのではないか」と話す。  REITと主要な施設運営会社が同グループという関係は、ホテル系や商業施設系に多い。同様の対応が広がれば「構造問題が意識され、近寄りがたい投資商品とみなされかねない」(アイビー総研の関大介氏)。  不動産証券化協会(ARES)によると、上場REITの約60銘柄が保有する不動産の総額は2月末時点で約19兆円。家賃収入(不動産賃貸事業収益)は19年度の1年間で約1兆1千億円ある。  イオンモールやイオンリテールは4月、運営するショッピングセンター(SC)に出店するテナントの賃料減免を発表した。SCを保有するのがイオンリート投資法人だ。商業施設系では同様の減免が多く出る可能性があり、REIT側に負担が発生しないか、投資家は注目している。  REIT全体の動きを示す東証REIT指数は、先週に再び軟調になった。新型コロナの影響が長引けば、家賃減免の動きが広がりREITの収益が悪化しかねない。

日経 2020年05月17日朝刊

 

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