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不動産・住宅関連【新聞各紙記事スクラップ】

試練の不動産ファンド 新型コロナでホテル賃料減少 資産40兆円 運用に陰り

 不動産投資信託(REIT)など不動産ファンドの運用が岐路に立たされている。新型コロナウイルスの影響でホテルなどの賃料収入は減少。物件売買の低迷が不動産価格の下落を招き、運用がさらに厳しくなる悪循環に陥る恐れもある。2008年のリーマン・ショック後に上場REITが破綻して以降、運用各社は財務の健全化を進めてきた。資産規模で約40兆円まで膨らんだファンドの耐性が試されている。  「3月以降、新規の物件売買はほぼ止まった」。米ファンド運用会社の幹部は明かす。不動産サービス大手のCBREによると、19年の取引額は3.5兆円と前年比8%増え、20年も活発な投資が続くとみられていた。  一部の不動産では賃料収入の減少が避けられない。上場REITのジャパン・ホテル・リート投資法人では3月の1室あたり売上高が前年同月比70%弱減ったもよう。商業ビルに投資する米ファンドにはテナントから賃料の減額要請が相次ぐ。  不動産ファンドの苦境を先読みする形で、上場REITの総合的な値動きを示す東証REIT指数は3月に急落し、19日には1,145と13年1月以来の安値を付けた。1日終値は1,498で、2月の高値より3割安い。  「有力な買い手が減り、実物不動産の価格下落は避けられない」とドイチェ・アセット・マネジメントの小夫孝一郎氏は指摘する。投資家がお金を出すのに慎重になっているのに加え、外出自粛や渡航制限で投資判断するための物件視察も難しくなっているためだ。  三井住友トラスト基礎研究所によると、上場REITの資産規模は19年末で約19兆円。この他、機関投資家向けの私募ファンドが20.2兆円を保有する。不動産価格が下がれば約40兆円のファンドの資産価値も目減りする恐れがある。  もっとも、一般に不動産は株などに比べて値動きが緩やかとされる。危険なのは、動揺した投資家や銀行が一気にお金を引き揚げ、ファンドが資金繰り難に陥ることだ。  08年には上場REITのニューシティ・レジデンス投資法人が資金繰り難から民事再生法の適用を申請した。当時を知る国内ファンド首脳は「融資が滞ったためファンドが物件を投げ売り、不動産相場の下落からさらに銀行が貸し渋るという悪循環に陥った」と話す。  当時の教訓からファンド運用各社は財務の改善を進めてきた。資産に対する有利子負債比率(LTV)の平均は09年で72%だったが、20年1月時点で54%まで低下した。国内ファンド首脳は「今のところ投資家が急いで資金を引き揚げたり、銀行が貸し渋ったりする動きはない」と話す。  米国ではインベスコが運用する不動産ローンに投資する上場REITの資金繰りが悪化。投資家の警戒が伝わり、日本で上場するインベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人が「本投資法人の財務状況や運用には影響を及ぼさない」とのコメントを出した。  不動産は債券や上場株式などに代わる「代替投資」として投資資金を集めてきた。新型コロナで市場の動揺が続けば、影響が思いがけず大きくなる恐れがある。

日経 2020年04月02日朝刊

 

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