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不動産・住宅関連【新聞各紙記事スクラップ】

REITに波乱 新型コロナ影響 オフィス需要 ブレーキ懸念

 不動産投資信託(REIT)市場の先行き不透明感が高まっている。総合的な値動きを示す東証REIT指数は2月の急落後、世界的な金利低下を追い風に持ち直してきた。だが、市場では昨年まで続いた上値基調に戻ると予想する声は少ない。新型コロナウイルスの感染拡大が好調だったオフィス需要にブレーキをかけるという新たな懸念が浮上している。  6日の東証REIT指数は3%下落した。REIT指数は2月は月間で9%下げ、3月2日の取引時間中には7カ月ぶりに一時2,000の節目を割り込んだ。フィデリティ投信の村井晶彦氏は「昨年から右肩上がりだったREIT市場は転換点を迎えた可能性がある」と指摘する。  株安局面では、利回り投資の側面のあるREITがマネーの逃避先になるケースがある。現状は新型コロナの余波による宿泊需要の急減で、減配リスクが警戒されているホテル系REITが急落。ホテル系以外の銘柄でも「株の急落で個人投資家などが値持ちのよかったREITを利益確定する動きを加速させ、金利低下では相殺できないほどのリスクオフになった」(SMBC日興証券の烏井裕史氏)という。  米長期金利とREIT指数は強い相関性があり、金利が下がるとREIT指数は上がる傾向がある。投資家が債券利回りとREITの分配金利回りを比較して投資先を選ぶケースが多いためだ。実際、3日の米国の緊急利下げを受けて米10年物国債利回りが初めて1%を割った後、東証REIT指数は反転した。  ひとまず下げ止まったものの、REIT指数はなお2019年11月に付けた昨年来高値2,257を約1割下回る。市場では、再びこの高値を目指す動きになれるかには懐疑的な見方が多い。懸念材料はオフィス系銘柄の減速だ。オフィス系銘柄はオフィス市況の好調持続期待から人気を集めてきたが、新型コロナ対応のテレワークの普及や企業業績の悪化で、賃料引き上げが停滞する可能性が出てきた。  みずほ証券によると、株式のPBR(株価純資産倍率)に相当する「NAV倍率」は、オフィス系が平均1.30倍と相対的に高い。同証券の大畠陽介氏は「新型コロナによる世界景気減速がオフィス市況の下押し圧力となり、今後、投資口価格に織り込まれる可能性が高い」と指摘。中長期的な実体経済へのマイナスを考慮して、20年末のREIT指数の予想を従来の2,350から2,000に下げた。  世界的な低金利で投資マネーがREITに向かいやすい状況は続くとみられるが、UBS証券の竹内一史氏は「ホテル系やリテール系などはまだ買いづらい銘柄が多い。しばらくは新型コロナの影響懸念と金融緩和を材料に乱高下が続く可能性が高い」とみる。  日銀の「買い支え」も不透明要因だ。日銀は2日、株価急落に対応して過去最大となる1,000億円を超える上場投資信託(ETF)を購入した一方、REITの買い入れは見送った。  不動産市況と需給の両面で、REIT市場は視界不良が続きそうだ。

日経 2020年03月07日朝刊

 

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