成長を続けてきた不動産投資信託(REIT)市場に、減速の兆しが強まってきた。2017年の物件取得額は約1兆8,000億円で前年に比べ25%減ったもよう。大幅な不動産価格上昇で物件を取得しにくくなったことが主因だ。投資家の間で高値警戒感が強まってきた。
みずほ信託銀行系の都市未来総合研究所の調べでは、17年は上場分のREITだけで物件取得額が約1.4兆円と、前年から2割減った。日銀の異次元緩和が導入された13年にREITの取得額は一気に増え、それ以降も高水準を続けてきたが、17年は5年ぶりに1.5兆円を下回った。
不動産サービスのCBRE(東京・千代田)によると、オフィスビルな
どの賃料収入を取得価格で割った投資利回りは最近、東京・大手町のオフィスビルで3.55%。03年の調査開始以来、最低の水準に下がった。
景気回復で賃料そのものは上昇しているものの、同時に物件価格も大量の緩和マネーで大きく押し上げられている。この結果、高い利回りの取れる物件が少なくなっており、REITの魅力が低下している。利回りが低迷すると、投資家に還元する分配金の伸びが鈍くなるためだ。
個人マネーの流出も痛手だ。上場REITは通常、増資によって多くの
投資家に出資の持ち分(投資口)を割り当て、物件の購入資金を確保する。企業でいえば株式にあたるものだ。
上場REITではこうした持ち分の2割ほどは毎月分配型の投信が持っている。超低金利下では高齢者を中心とする個人マネーを引き寄せてきたが、投資で増えた利子を元本に入れて運用を続ける「複利効果」の得られない毎月分配型の人気は低下に歯止めがかからなくなっている。
そのあおりを受け、上場REITの総合的な値動きを示す東証REIT指数も17年は1年で1割ほど下がった。
上場しているREITは59銘柄ある。ところがこのところの価格を見ると、REITの価値(純資産)を下回って推移しているものが半数近い。
これまでREITは増資でお金を集めていい利回りの物件を集めることで、先々の成長のストーリーを描いてきた。ところが毎月分配型投信によるREITの売りを嫌って新たな投資家の買いが集まりにくくなっている。
地方銀行や信用金庫などが積極投資してきた「私募」と呼ばれる非上場のREITも、17年の取得額が前年を初めて下回った。三井住友トラスト基礎研究所によると、17年の物件取得額は4,000億円弱で、前年から
4割近く減ったようだ。
私募REITは賃料収入などから分配金を支払う。オフィスビルが資産の4割を占め最も多い。利回りは平均4%程度だ。三井住友トラスト基礎研の清原龍彦主任研究員は「投資口数当たりの分配金を固定していることが多く、資産規模が膨らみ利回りは低下傾向にある」という。
【REIT】
Real Estate Investment Trust(不動産投資信託)の略称。オフィスビルや賃貸マンションなど複数の不動産に投資し、物件から得る賃料収入や売却益を投資家に分配金として支払う。上場REITの時価総額は11兆円強。国内では2001年に第1号が上場し、10年に私募型が登場した。
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