浜松市は、路線バスなど公共交通の縮小が進む同市の西区庄内地区と天竜区春野地区を対象に、住民が自家用車で同じ地域の高齢者らを病院やスーパーなどに送迎する「共助型交通」の導入を検討している。地元の自治会連合会やNPOなどによる運行を想定し、住民に希望する運行方式を尋ねるアンケートも実施した。ドライバー確保などの課題がクリアされれば2022年度中にも試行を始める。
共助型交通は住民が所有する白ナンバーの自家用車を運行し、乗車した人から利用料を得る方式で、国は「自家用有償旅客運送」として認めている。法定講習を受けた安全運転管理者を置き、国土交通省の許可を受ければ、運行できる。天竜区内ではNPO法人が運転手を確保して白ナンバー車を運行する「NPOタクシー」は運行されているが、住民が空いた時間にマイカーを運行する共助型交通が本格的に導入されれば、県内初とみられる。
市は21年度から、次世代交通サービス「MaaS(マース)」の重点施策として、共助型交通の推進モデル事業を開始した。浜名湖に面する庄内地区を都市郊外、春野地区を中山間地域のモデル地域に選び、地元自治連やNPOと検討を進めてきた。
一方、既存の公共交通との共存を図るために、共助型交通は市の中心部への直行運転は行わず、基本的には当該地区内や地区周辺で運行する方針。バス停や駅まで共助型交通を利用し、乗り換える形も想定している。
庄内地区の新間秀人自治会連合会長(69)は「住民同士で助け合う方法は良いと思う。ドライバーの担い手として協力の意思を示す住民もいる」と話す。その上で「長期的に継続していくためにはタクシーなどにはない付加価値の創出も必要ではないか」と考える。
持続可能な地域づくりに取り組む鈴木康友市長は「公共交通の維持が厳しくなる中、地域の移動手段確保の決め手になるはず」と期待を寄せる。
移動スーパーなど 連携探る
共助型交通モデル地区の浜松市西区庄内地区には、大型のスーパーやドラッグストアがない。このため、食品スーパーの遠鉄ストア(同市中区)が週3日程度、地区外の店舗まで往復する買い物バスを運行。ドラッグストアを展開する杏林堂薬局(同)も週3日程度、軽トラックによる同地区での「移動スーパー」を実施している。
こうした民間サービスの提供場所が自宅から遠い住民もいることから、市は共助型交通と連携した利用形態の可能性も探る。
県外では、既に共助型交通を導入している自治体も見られる。兵庫県養父市や京都府京丹後市ではNPO、富山県朝日町は町、京都府福知山市では住民協議会がそれぞれ運行主体を担う。事前予約の必要性や乗り合いの有無、運賃体系などは自治体ごとにさまざまな方式が採られている。
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