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財務省、国債表面利率7年ぶり上げ 利払い負担 くすぶる懸念 債務残高 低金利で膨張

 財務省は5日、4月に発行する10年物国債の表面利率を市場の実勢に合わせて年0.1%から0.2%へと7年ぶりに引き上げた。日銀が金融緩和政策の一環で長期金利の上限目安を0.25%程度としているため、当面は同水準の利率が続く見通し。ただこれまでの低金利下で国の債務は積み上がっており、今後の金利動向次第で利払い費負担が財政運営の重荷となる懸念はくすぶる。  財務省が5日実施した入札で、10年物国債の平均落札利回りは0.201%だった。3月発行分は0.179%だったが、最近は長期金利の指標となる新発10年債の利回りが0.2%前後で推移しており、それを反映して上昇した。  背景には、米連邦準備制度理事会(FRB)が物価高を抑えるために利上げを加速するとの観測が強まったことがある。SMBC日興証券の奥村任金利ストラテジストは「今後も長期金利は下がりづらいだろう」と分析する。一方で、日銀が大規模な金融緩和を続けている限り、長期金利は上昇しても当面0.25%程度でとどまるとする見方が市場では強い。  しかし、国の長期債務残高は2021年度末に1千兆円の大台を突破する見通しで、22年度末には1,055兆円に達すると試算される。22年度予算は107兆円を超えるが、歳入の3割以上を新たな国債発行で賄う借金頼みの財政運営だ。予算のうち利払い費は8兆2千億円にも上っている。  金融政策が正常化に向かえば金利が上昇し、利払い費がさらに膨らむ可能性がある。大和総研の末吉孝行シニアエコノミストは「金融緩和の解除後、しばらくたつと利払い費がかさみ始めるだろう」と指摘する。 Q&A生活への影響  財務省は「10年物」と呼ばれる国債の入札で、表面利率を7年ぶりに引き上げました。  Q 表面利率とは。  A 債券の額面価格に対して、1年間に支払われる利子の比率のことです。財務省は新たに発行する国債を金融機関などに売るために入札を実施しており、その際に需要を勘案して利率を決めています。  Q どれくらい引き上げたのですか。  A 4月発行の10年債で、3月までの年0.1%から0.2%に引き上げました。額面100円の国債の保有者に利子を年0.2円ずつ、満期を迎えるまでの10年間にわたって支払います。  Q 上げた理由は。  A 財務省は、国債市場の実勢に応じて変動する「利回り」を踏まえて入札時の表面利率を決めています。欧米で中央銀行がインフレを抑えるため金融政策の引き締めに動き、長期金利の上昇が日本にも波及しました。財務省は、利回りとかけ離れた表面利率にすると入札が不調に終わる可能性があるため、利率を引き上げたのです。  Q 利率と利回りの関係を具体的に教えてください。  A 発行済みの国債は市場で売買され、需給次第では額面と異なる価格で取引されま す。額面価格が100円で表面利率が年5%、償還まで1年の債券の例で見てみましょう。市場で95円で買えれば、1年後に額面と利子の計105円が手元に戻り、10円の利益が出ます。この場合の利回りは約10.5%になります。  Q 国債利率の上昇で、生活にどんな影響がありますか。  A 政府が発行し、信用力が高いとみなされている国債の利率や利回りは、民間のさまざまな金融取引の基準となっています。個人の生活に関わる代表的なものは住宅ローン金利で、利率が上がれば固定金利の上昇圧力が強まります。企業への貸出金利にも影響が及ぶかもしれません。長期、安定を目標にした資産運用には利子の額が増えるためプラスに働きそうです。  Q 国には。  A 国債利率の上昇は財政運営の負担になる恐れがあります。金利が上がるだけで税収が増えなければ、利払い費を賄うために社会保障などに使う予算を削る必要が出かねません。

静岡 2022年04月06日朝刊

 

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