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長期金利 6年ぶり高水準 日本、海外への上昇が波及 経済情勢とズレ警戒感

 海外の金利上昇が日本にも波及してきた。31日には長期金利が一時6年ぶりの高水準となった。日銀が長期金利をゼロ%程度に固定する「長短金利操作」(イールドカーブ・コントロール=YCC)を導入して以降では最高だ。低成長が続く日本の経済情勢とは距離があり、住宅ローンの固定金利を押し上げる長期金利の上昇には警戒感も増している。  31日の国内債券市場で長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは一時、前週末比0.020%高い(債券価格は安い)0.185%を付けた。日銀が2016年9月にYCCを導入して以降では最も高く、日銀がマイナス金利政策導入を決めた同年1月29日以来の高水準となった。  背景にあるのは海外金利の上昇だ。米連邦準備理事会(FRB)が3月にも利上げに動くとの見方が広がり、米10年債利回りは一時1.9%台まで上昇。欧州でもドイツの長期金利が一時2年8カ月ぶりにプラス圏に浮上した。  海外市場では米国の利上げが景気を冷やすとの懸念から30年債などの超長期債の利回りは低下傾向にあるが、日本ではむしろ超長期債の利回り上昇が目立つ。国際通貨基金(IMF)が1月28日に利回り目標の短期化を提言し、日銀が海外中銀に足並みをそろえてYCCの修正に動くのではないかとの思惑が海外勢を中心に浮上。イールドカーブに急勾配(スティープ)化圧力がかかるとの見方が広がった。  日銀と蜜にコミュニケーションを取る国内の市場関係者と違い、海外勢はヘッドライン(ニュースの見出し)に反応しやすい。黒田東彦総裁は18日の記者会見で早期緩和修正論を否定したが、ある市場関係者は「日銀が16年に直前まで否定していたマイナス金利政策を導入した過去もあり、今回は海外勢の緩和修正の思惑が消えない」と苦笑する。  一方、午後の取引終了にかけては地銀勢が積極的に取引する新発20年物国債を中心に押し目買いが入るなど、国内勢の買い意欲は強い。  足元の金利上昇は日本経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)を反映していない面もある。IMFの経済見通しでは22年の日本の実質経済成長率は3.3%と、欧米や先進国の平均を下回る。消費者物価上昇率は生鮮食品を除くベースで0.5%にとどまり、目標の2%を大きく上回る欧米とは差がある。  長期金利は固定型の住宅ローン金利との連動性が高い。日本の3メガバンクは2月適用分の住宅ローン金利をそろって引き上げる。長期金利の上昇が続けば住宅ローン金利のさらなる上昇を通じて、個人の消費マインドなどに影響が出る可能性もある。  日銀は10年債利回りをゼロ%程度にするよう金融調節を行っており、21年3月には金利の変動幅を上下0.25%程度と明示した。長期金利が0.25%程度に上昇してきた場合、日銀は特定の金利で国債を無制限に買って金利を抑える。金利上昇圧力が特に強い場合にも対応できるよう必要に応じて連続でも実施する。  日銀は市場機能にも配慮し、金利にある程度の変動があることは望ましいと考えている。ただ2%の物価目標が見通せないなか、黒田総裁は強力な金融緩和を続ける構えを強調している。10年債利回りが0.25%に近づけば機動的に無制限の国債買い入れを打ち出す可能性が高い。  もっとも金利抑制策の効果には不透明感も増している。海外投資家による日本国債の保有比率は13.4%と、10年末の6.5%から大きく上昇した。東海東京証券の佐野一彦氏は「海外勢による保有が増え、かつてより海外市場と日本国債の連動性は増している」と指摘する。  日本より国債の海外保有比率が高いオーストラリアでは、金利上昇圧力が強まった21年11月に中央銀行が3年債の利回り目標撤廃を余儀なくされた。海外発の金利上昇圧力が一段と強まれば、日銀も金利抑制が難しくなる可能性もある。 長期金利操作 世界でも異例  ▼イールドカーブ・コントロール  2016年9月に日銀が導入した金融政策。金融機関が日銀に預けるお金の一部の金利(短期金利)をマイナス0.1%、長期金利をゼロ%程度とする。市場の国債需給などで決まる長期金利を直接操作する金融政策は世界的にも極めて異例だ。  日銀は債券市場の機能向上を目指し、長期金利の変動許容幅を拡大してきた。16年の導入当初は長期金利の変動幅として日銀が上下0.1%程度を許容するとの見方が大勢だった。  18年7月の金融政策決定会合で日銀が金融政策の持続性強化策を打ち出した際に、黒田東彦総裁が記者会見で「上下0.1%の倍程度」と発言。21年3月の政策点検では「長期金利の変動幅はプラスマイナス0.25%程度であることを明確化する」と盛り込んだ。

日経 2022年02月01日朝刊

 

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