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不動産・住宅関連【新聞各紙記事スクラップ】

住宅用木材の上昇鈍化 国内価格、輸入量が回復

 住宅に使う木材の国内価格の上昇が鈍り始めた。米国発の相場高「ウッドショック」で今春から軒並み急騰していたが、輸入量が徐々に回復して輸入材、国産材ともに逼迫感が薄れつつある。輸入材は上昇幅が縮み、国産の製材品は値上がりが止まった。ただ、輸入材は最高値で契約した素材が入港し始めたところ。需要も堅調で高止まりが続きそうだ。  原料を欧州などから輸入し、住宅の梁(はり)や柱に使う集成材は上昇ピッチが鈍った。指標となる集成平角(4m×10.5cm×30cm)は東京地区の流通価格が現在1立方m13万5千円(中心値)。春以降は毎月、前月比で約2割上昇し、4カ月連続で最高値を更新していたが、9月の上昇幅は前月比5千円(4%)にとどまった。  集成材と競合する北米産の米松製材品も、梁材の指標となる米松KD(乾燥)平角(4m×10.5cm×30cm)が現在1立方m9万5千円と前月比4,500円(5%)高くなったが、前月までは2桁増だった。グリン(未乾燥)材は同7万5千円と横ばいだった。  理由は、輸入量の回復だ。集成材はエジプト・スエズ運河での座礁事故の影響に伴うコンテナ船の混乱が一時的に解消し、一定量が入荷した。7月の集成材の輸入量は前月比1%増の8万8千立方mと5カ月連続で前月を上回った。  北米産は米国価格が5月の歴史的高値から急落する一方で、日本向け価格は年初比で2倍強の高値にあるため、供給意欲が増したようだ。米国とカナダからの製材品の輸入量も7月は13万7千立方mと同4%増えた。  都内の木材問屋は「少し前までの『どこにも木材がない』という状況は解消された。需給のバランスが正常な水準に戻りつつある」と語る。  これを受けスギやヒノキなど国産材は値上がりが止まった。7月に23年半ぶりの高値を付けたヒノキのグリン正角(3m×10.5cm角)は首都圏の問屋卸価格が9月に1立方m9万円と2カ月連続で同値だった。  KD正角(同)も現在1立方m15万円と前月比横ばいとなり、4月以降続いた上昇が止まった。国産材は輸入材の不足で代替需要が生まれ、価格が急騰してきたが、輸入量の回復で製材品全体の逼迫感が解消した。  KD材はグリン材に比べて乾燥に時間がかかり需要も多いため値上がりも急だったが、「ないもの高」による急騰に歯止めがかかった。関東で国産材を扱う市場の担当者は「7月下旬からセリの勢いも落ち着き始めた」と話す。  例年夏場は建築不需要期で、原木の丸太価格は下落する傾向がある。今年は需要の強さから高値を維持していたが、8月には生産量の多い九州でスギ丸太の価格が一部下落した。  もっとも、集成材に関しては、最高値で価格交渉が決着した欧州産の引き板材「ラミナ」が足元で人港し始めた局面だ。ウッドショックの発端となった米国で木材価格が下がった後も欧州内の需要は強く、欧州メーカーの多くは対日価格を下げていない。秋の建築需要期入りを前に「メーカーの価格転嫁分を受け入れるくらい需要は旺盛」(問屋)との見方が強く、国内価格はなお強含みで推移しそうだ。 <国産合板は一段高 10年半ぶり水準 生産追いつかず>  住宅の壁や床に使う国産針葉樹合板は流通価格が一段高となった。構造用合板の指標である厚さ12mm品の東京地区の問屋卸価格は現在1枚1,100円(中心値)。前月より25円(2%)高く、東日本大震災の復興需要が急増した2011年4月以来の高値をつけた。  欧州産材を中心に梁(はり)や柱などの製材品の入荷が増え、受注を制限していた木材のプレカットメーカーが一気にフル稼働に切り替えた。  一方、国産合板メーカーの生産が追いつかない。農林水産省によると、7月の合板生産量は27万立方mと6月比微減だった。大手合板メーカーは「8月はお盆休みと機械の定期修理で稼働が一層落ちた」と話す。  この結果、国産が主流の構造用合板が急速に品薄になった。プレカットメーカーは合板メーカーから直接買う分だけでは足りず、「ホームセンターや問屋からも買い集めている」(プレカット大手)。構造用合板は輸入品も少なく、代替がきかない。「製材品は輸入量が回復すれば逼迫感がなくなる。今は合板の方が足りない」(同)  国産合板メーカーは丸太や接着剤の価格上昇を理由に、年明けから断続的に値上げを表明していた。需給逼迫で値上げの浸透が進んだ。  輸入合板も高い。型枠用合板は指標の12mmの輸入品の問屋卸価格(東京地区)が1枚1,520円(中心値)と前月比50円(3%)高く、最高値を更新した。主産地の東南アジアのロックダウン(都市封鎖)の影響で工場の稼働率が下がった。

日経 2021年09月09日朝刊

 

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