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不動産・住宅関連【新聞各紙記事スクラップ】

住宅テック、Z世代に照準 セレンディクス 3Dプリンターで300万円 ユニット 帰宅日数で家賃を変動 「定住こだわらず」商機に

 定住や持ち家にこだわらない若者を狙った住宅サービスが相次いでいる。セレンディクス(兵庫県西宮市)は2022年にも、3Dプリンターで建てた格安物件の販売を開始。ユニット(東京・千代田)は帰宅日数に応じて家賃を減らす賃貸住宅を増設する。1990年代後半以降に生まれたZ世代を中心とした新しい住宅観に、スタートアップが応えている。  「マイカーと同じように、マイホームを買い替えられる時代をつくる」。セレンディクスの飯田国大・最高執行責任者(COO)は意気込む。11月中旬に3Dプリンターを使った球体住宅「スフィア」を試作し、22年1月にまずは企業向けに、同年夏をメドに個人向けにも販売する計画だ。  スフィアは建築基準法の対象にあたらない床面積10平方m以下のサイズを想定。コンクリートなどを原材料として外壁や床を形成する。耐震性を担保するために、富士山レーダーなどでも導入された「ジオデシック・ドーム」と呼ばれる球体構造を参考に開発した。  電気設備は人力で施工するが、作業は計3日間で完了する。人件費や建材の物流費を減らし、同サイズであれば300万円程度から建てられる。設置する際は別途、土地の購入が必要になる。  3Dプリンター住宅は欧米で実用化されているが、国内で販売するのはスフィアが初めての事例になるという。建設や販売は、住宅メーカーや建設会社など約40社で構成するコンソーシアムが共同で担う。別荘などの収益物件として購入を希望する企業は約40社に達し、個人の購入希望者も100人を超える。  不動産情報サービスのLIFULL(ライフル)によると、東京都内の賃貸マンションの平均賃料は川10年に比べ1.2倍に上昇した。「LIFULL HOME’S総研」の中山登志朗副所長は「新型コロナウイルス禍で生活の安定感が低下し、住宅を買う覚悟を持つのはより難しくなった」と指摘。「共有」の消費スタイルが広がり、マイホームヘのこだわりが薄い若者も少なくない。  こうした変化を新興勢は商機とみる。ユニットは住人が外泊する場合、72時間前までに申請すれば家賃を減額するサービスを手掛ける。割引方法は物件によって異なるが、月額家賃から基本料金を引き、その残りから日割りで減らすのが一般的だ。外泊中の部屋は貸し出し、宿泊者がいた場合は家主の収入になる。  この仕組みの直営物件を近く東京都大田区と横浜市で開設する。すでに運営している東京都渋谷区や千代田区などの物件を合わせ、部屋数を1割増の100室に増やす。25年7月までには2,500室へ拡大する目標だ。  近藤佑太朗社長は「恋人の家や実家などで1カ月に10日間ほど外泊する若者は多い」と指摘する。サービス開始から1年半で、月間利用者数は直営物件以外も含めて300人を超えた。  信用保証面でも新たな需要を反映したサービスが広がってきた。フリーランス人材に不動産賃貸の与信サービスを提供するリース(東京・新宿)は家賃保証会社向けに、フリーランスの仕事の受注状況や年収、年齢などを基に人工知能(AI)が信用力を自動的に評価するソフトを開発した。  リースの与信サービスは20〜30代の利用が多く、エンジニアやクリエーターなどを中心に1万人を超えた。蓄積したノウハウを、フリーランスに対する与信に不慣れな家賃保証会社に活用してもらい、市場拡大につなげる狙いだ。  対面や現金を重視するなど古い商習慣も残る不動産業界だが、実際のニーズとの乖離(かいり)を埋める動きは行政でも進む。国土交通省は3月、以前は対面を義務付けていた不動産売買取引での重要事項の説明を、ビデオ通話で代替できるようにした。  矢野経済研究所によると、国内の不動産テックの市場規模は25年度に1兆2,461億円と、20年度の約2倍に拡大する見通し。現状の不動産業界に満足できないZ世代に応えるスタートアップの新サービスが続々と生まれそうだ。

日経 2021年11月03日朝刊

 

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