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不動産・住宅関連【新聞各紙記事スクラップ】

不動産、収益拡大 息切れ感 今期、市況の上昇一服 三井不は一転最高益に

 不動産ブームの終わりは近い−−。こんな兆しが、不動産大手が9日までに発表した2018年4〜9月期(上期)の連結決算に表れている。ここ数年は各社とも不動産価格の上昇を追い風に収益を拡大してきたが、今期は息切れ感が目立つ。今後は東京都心のオフィスビルなど優良資産をどれだけ保有するかで、収益力の格差が広がりそうだ。  三井不動産は9日、19年3月期通期の純利益見通しを5%増の1,630億円と、従来予想から100億円引き上げた。2%減の見通しから、一転、5年連続の最高益となる。東南アジアで地元企業と手掛ける住宅事業が好調で、持ち分法投資利益が上向く。英ロンドンの分譲住宅の引き渡しなど他の海外事業も好調だ。一方、営業利益は2%増の予想を変えなかった。  国内の市況改善を追い風に、各社はこれまで期中に通期予想を引き上げる傾向が強かったが、今期は様変わりしている。  三菱地所は前期比1%増を見込む通期予想を据え置いた。前期に1回、17年3月期までの3年間は年2回引き上げていた。野村証券の福島大輔 氏は「期初予想より大きく上振れし続けるような市況の上昇局面が終わったように映る」と話す。  実際、増益率は徐々に鈍化している。総合デベロッパー大手6社(三井不、菱地所、大和ハウス工業、住友不動産、東急不動産ホールディングス、野村不動産ホールディングス)が9日までに開示した19年3月期の営業利益見通しの合計は前期比2%増。増益率は17年3月期の15%から低下する。  不動産業界は2つの環境変化に直面する。1つは金融機関の不動産に対する融資姿勢の厳格化だ。投資用不動産向け融資は、スルガ銀行の不適切融資問題で一気に冷え込んだ。大和ハウスの上期業績ではアパートなど賃貸住宅部門の営業利益が6%減った。「(土地の)オーナーの投資マインドが冷え込み、融資の問題も足を引っ張っている」(芳井敬一社長)  もう1つが居住用不動産だ。野村不HDは今期の住宅事業の部門営業利益を前期比2%減の240億円と期初計画から25億円引き下げた。マンシ ョン価格の上昇に消費者の購買力が追いつかなくなっており「在庫が積み上がりすぎないよう価格を切り下げる」(木村博行取締役)という。  SMBC目興証券の田沢淳一氏は「今後は不動産販売などフロー収益への依存度が高い企業は業績拡大が厳しくなる」と指摘する。  今期に都心で大型ビルが相次ぎ開業する三井不は「来期以降も増益基調が期待できる」(佐藤雅敏取締役)。業界全体への追い風が弱まるなか、今後はストック収益の大きさや事業バランスで明暗が分かれそうだ。

日経 2018年11月10日朝刊

 

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