国内でトランクルーム市場が拡大している。新型コロナウイルス禍で在宅勤務が広がり、自宅で働くスペースを確保するために荷物を預ける人が増えている。店舗数は2021年に1万2千店を超え、ファミリーレスト
ランの店舗数を上回る規模になった。新規参入が相次ぎ市場拡大は続く見通しだが、用地取得を巡る競争は激しさを増している。
大手のキュラーズ(東京・品川)は、東京23区では1畳あたり月1万3,000円台からトランクルームを提供している。
同社によると、国内のトランクルームの店舗数は21年8月時点で約1万2,000店で、ファミリーレストランの店舗数(21年8月時点で1万305店)を上回った。コロナ前の19年末比で11%増え、直近8年間でほぼ倍増している。国内の市場規模(屋内型と屋外型の合計)は20年で約670億円と、10年前から約2倍に拡大した。
都内で13店舗を運営しているトランクルーム東京(同・港)では、利用者の9割が個人でファミリー層が中心だ。趣味のスキーやサーフィン用具などを使わない季節に預ける人もいる。
足元で増えている顧客が、コロナ禍で在宅勤務を始めた会社員だ。自宅にパソコンやモニターを置き、快適に仕事をするスペースを確保するため、荷物の一部をトランクルームに収容する。
「ハローストレージ」ブランドで展開するエリアリンクも事業は堅調に推移する。全国で運営する10万室弱の21年12月時点の稼働率は約86%と上場以降で最高水準に達する。21年は1,000室を新規出店する計画だったが、1,600室を超えた。21年12月には新ブランドとして小型店の出店を開始。新たなニーズを掘り起こす。
市場の成長が続く背景には、日本の住まいの狭さもある。国土交通省によると日本の新設住宅の1戸当たり床面積は20年度に約82平方mと、20年前から約15平方m減った。1人当たりの住宅床面積を国際比較すると、日本は米国やフランス、ドイツより狭い。自宅近くのトランクルームに、普段は使わない品を収容したいというニーズは強まっている。
キュラーズのスティーブ・スポーン社長は国内市場について「年率で前年を1割程度上回るペースで成長が続く」とみており、市場規模は26年に1,000億円を超えると予測する。同社によると米国のトランクルームの世帯普及率は10%ほどで、1%にも満たない日本は成長余地が大きい。 トランクルームは駅前や大通り沿いなど利便性の高い立地の出店で成長してきた側面もある。成長を取り込もうと新規参入組も増えるなか、最適な土地を巡る取得競争も激化している。
「新型コロナの影響でこの2年は売り案件が減っている」(業界関係者)。好立地の土地や不動産価格は上がっており、採算が取りにくい物件も目立ってきたという。
個人が融資を受けて物件を建て、運営を企業に委託するケースも多い。投資物件としての魅力が下がれば、店舗の増加に、ブレーキがかかる可能性もある。
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