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不動産・住宅関連【新聞各紙記事スクラップ】

リース取引資産計上へ 不動産・小売り 影響大きく 負債増、ROA悪化も

 日本会計基準で簿外になっている設備や不動産などのオペレーティングリース(オペリース)が、貸借対照表に計上される見通しになった。日本基準を使う上場企業全体で負債が単純計算で約17兆円増え、不動産や小売りなどの影響が大きくなる見込みだ。総資産利益率(ROA)や自己資本比率など財務指標が悪化し、投資家の判断に影響を与える可能性がある。  日本の会計ルールをつくる企業会計基準委員会(ASBJ)は8日に会合を開き、事務局が「すべてのリースについて資産・負債を認識する基準の開発に着手する」と提案。委員からは国際会計基準(IFRS)などと比較しやすくなることから賛成の声が出る一方、「急がなくても良い」との意見も出た。ASBJは月内の合意を目指す。  個別企業にそれぞれどの程度の影響があるか。日本経済新聞は、有価証券報告書の注記でオペリース残高(借り手の未経過リース料の残高)を開示している約1,250社の数値から推計した。  オペリースの残高が大きい企業の中で目立つのは不動産業だ。中でも「サブリース」を手掛ける企業の残高が大きい。サブリース業者は地主からアパートの建築を受注し、完成後は地主から一括で借り上げて入居者に転貸している。アパートのオーナーに固定で一定期間支払う賃借料がオペリースの扱いとなり、現在は簿外になっている。  全国で108万戸のアパートを管理する大東建託は、2018年3月期末で約2兆3,000億円のオペリース残高を抱える。仮にバランスシートに全額反映した場合は10%強だったROA(純利益ベース)が3%を下回る可能性がある。同業大手の大和ハウス工業やレオパレス21、東建コーポレーションも同様の影響が出るとみられる。  大東建託の投資家向け広報(IR)担当者は「会計基準が変わるとROAが下がるが、ビジネスモデルが変わるわけではないと投資家に説明している」と話す。東建コーポのIR担当者は「必要であれば負債からオペリースを差し引いた数値を出し、継続的な数値で説明していく」という。  不動産業界を担当する野村証券の福島大輔アナリストは「会計基準の変更に伴う見かけ上の数値の悪化だとしても、実際に変わった場合に投資家が冷静に判断できるかは分からない」と話す。  店舗などをオペリースで利用している小売りが多いのも特徴だ。イオンは主に総合スーパーや商業施設「イオンモール」の土地や建物が対象で、オペリースの残高は約1兆3,600億円。セブン&アイ・ホールディングスは約6,100億円で、コンビニエンスストアの土地や建物などでオペリースを利用している。  金額が多い企業には、船舶などをリースで使う商船三井や日本郵船などの海運、航空機材などのANAホールディングスなどの空運も含まれる。  企業の負債返済能力を評価する格付け会社は「(リース取引の注記などに基づき)独自の基準で資産・負債に計上し、すでに格付けに反映させている」(ムーディーズ・ジャパン)と説明。ただ「負債に加わるオペリースが注記の開示より増える可能性もあるため、影響を注視する必要がある」(格付けアナリスト)との声も聞かれる。  株式市場も基準変更の影響に注目する。ドイツ証券の風早隆弘氏は「海外企業と比較しやすいバランスシートになるので、新たな投資機会につながる可能性がある」と指摘。一方、「見かけの財務悪化で借入金利が上昇したり、会社側が株主還元をためらったりするようになれば、投資対象としての魅力が下がりかねない」(アバディーン・スタンダード・インベストメンツの窪田慶太氏)との声も出ている。

日経 2019年03月09日朝刊

 

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