高水準だった国内の不動産売買に減速感がでている。2018年7〜12月の取引額は1兆7,290億円と前年同期に比べ34%減った。半期の取引額としては6年ぶりの低水準だ。これまで欧米市場などに比べ値ごろ感があると積極的だった海外勢が購入を控え始めた。潤沢な世界のマネーが日本の不動産市場にも流れ込む構図に変化がみられる。
みずほ信託銀行系の都市未来総合研究所が集計した。海外勢による購入は1年前は全体の3割強を占めたが、18年下期は919億円と前年同期か
ら9割減少した。
米大手不動産ファンドの日本法人幹部は「最近は物件をあまり買えていない」と話す。昨年後半にかけ物件が減り始め、出回る案件も高額すぎて採算が合わないという。
特に大型取引が減っている。18年は開発用地の取引を除くと関電不動産開発(大阪市)など7社連合が「芝パークビル」(東京・港)を購入した約1,500億円が最高だった。17年の場合、中国の安邦保険集団が米ブラックストーンから約2,600億円で賃貸マンション約200棟を取得するなど大型取引があった。
高値圏にある不動産価格の一段の上昇余地が狭まりつつあるとの見方が増えている。賃料収入との比較でみた投資利回りが3%台前半まで低下し「さらに低い利回りを許容できる投資家は少ない」(不動産サービス大手CBREの大久保寛氏)。
最近は「かつて中国人投資家が大量に購入した湾岸のマンションの売り物がでている」(不動産会社)との声もきかれる。経済減速下での資金流出を警戒する中国当局の規制強化を受け、海外の不動産購入に向かっていた「中国マネー」が本国に回帰しているもよう。
国内ではスルガ銀行の不適切融資問題などを背景に金融機関が不動産向け融資に慎重になり始めた事情もある。日銀によると、金融機関の不動産・大企業向け貸出態度判断は「緩い」から「厳しい」を引いたDIが18年12月時点でプラス20と直近ピークの17年3月(プラス29)から大きく低下した。
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