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不動産・住宅関連【新聞各紙記事スクラップ】

アパート融資 退潮鮮明 昨年、新規16%減 スルガ銀問題で慎重に

 アパートやマンションといった投資用不動産の取得資金を対象にした個人向け融資の退潮が鮮明だ。日銀によれば、2018年の新規融資額は前年比で16%減の2兆8,348億円。09年に調査を始めてから最大の減少率となった。富裕層や会社員らの不動産投資ブームで急拡大してきたが、不正融資が横行したスルガ銀行の問題で他の銀行も慎重な姿勢に転じた。  15年の税制改正で相続税の課税対象が拡大されたこともあり、土地所有者や富裕層を中心に投資用アパート・マンションの建築に火が付いた。所有地にアパートを建てると土地の評価額が下がり、借金で純資産額を圧縮することで相続税の負担を減らす策が注目された。  15年から17年にかけてアパート融資は新規の実行額が3兆円台まで膨らんだ。特に16年は15年比で22%増の高い伸びとなった。土地所有者の節税需要が一巡すると、副収入や資産形成を狙った会社員の投資用不動産の取得熱に注目が集まり、融資が増えた。日銀のマイナス金利政策もあり、銀行は投資用不動産への融資を競い合った。  暗転したのは18年。投資用不動産を取得したい会社員らへの融資に積極的だったスルガ銀行の不祥事が発覚した。借り入れ希望者の年収や資産などを示す審査書類の改ざん、取引価格を水増しした不動産売買契約書の偽造が横行していた。本来は返済能力の低い相手にも億円単位で貸した。  日銀によると18年10〜12月期の新規融資額は14%減の5,879億円。8四半期連続で前年実績を下回った。スルガ銀行は18年10月に金融庁から投資用不動産融資で6カ月間の業務停止命令を受け、新規融資を止めた。スルガ銀行は16年度に3,900億円、17年度に2,600億円をこの分野で新規に融資。同行の「市場退出」が全体の融資を押し下げた面もある。  アパートの施工・管理を手がける東証1部上場のTATERUでも建設資金の借り入れ希望者の預金残高を水増しするなどの改ざんが18年8月末に発覚。アパートの建設資金を融資してきた山口県地盤の西京銀行は8月末以降、新規案件への融資を止めている。  金融庁が実態調査に乗り出し、他の銀行も一斉に慎重な姿勢に転じた。日本経済新聞が全国の地方銀行を対象にした昨年10月の調査では「今後、積極的にアパート融資を伸ばす」とした回答はゼロ。担保価値を保守的に評価したり、融資判断を本部に集約したりして審査を厳しくしたとの回答も4割強にのぼった。  例えば、融資の対象者を金融資産1億円以上に限り、会社員への融資を実質的に止めた銀行、審査書類の偽造が疑われる借り手を調査して資金の一部を返還させた銀行もある。  神奈川県在住で著名な不動産投資家は18年に新規物件の取得で銀行に融資を申し込んだが、断られた。「詳しい話も聞かずに断られたのは初めてだった」という。  国土交通省によるとアパートを含む貸家の新築着工戸数は18年に前年比で5%減の約39万6,000戸だった。7年ぶりに減った。銀行が融資を絞り始めた影響が顕著で、不動産市況の変調を懸念する声も出てきた。

日経 2019年02月13日朝刊

 

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