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不動産・住宅関連【新聞各紙記事スクラップ】

不動産買収 日本で加速 物件保有企業丸ごと・REIT・・・ 国内取得額07年以来の水準 カネ余り、ファンドに勢い

 不動産会社や不動産投資信託(REIT)を巡る買収の波が日本に再び及んできた。世界的なカネ余りを受けて不動産ファンドの投資余力が高まっているのが背景だ。2017年の海外勢による国内の不動産取得額は07年以来の高水準となり、足元でも買収や業界再編が加速する。一方で、銀行などの融資基準が緩むことに警戒する声も出ている。  18年8月、カナダの不動産大手ブルックフィールド・プロパティー・パートナーズが米大手GGPの買収を完了した。負債を含めた買収額は3兆円超。両社とも主に商業施設を保有・運営し、規模拡大でネット通販などとの競争に備える狙いだ。  調査会社リフィニティブによると、17年の不動産業界の買収額は世界全体で5,304億ドルと前年比47%増え、過去最高だ。18年1〜10月は前年同期比14%減ったものの、高水準を維持する。  なかでも不動産ファンドの投資意欲が高い。調査会社プレキンの集計では、世界の不動産ファンドの投資枠は18年10月時点で2,890億ドル(約32兆円)に拡大した。  投資マネーの流入で世界の主要都市のオフィスビル価格は10年比で1.5〜2倍になった。優良物件を個別に取得しにくくなり、「不動産を保有する企業を丸ごと買収した方が時間や手間も省けるとの判断が働きやすい」(日本不動産研究所の吉野薫主任研究員)。  同研究所によると、海外投資家による国内不動産取得額は17年に約1兆3,000億円で、過去最高だった07年以来の高水準になった。「良好な資金調達環境が海外勢を呼び寄せている」(JLLキャピタルマーケット事業部の内藤康二氏)という。  17年には米ブラックストーン・グループが、オーストラリアとシンガポールの上場REITをそれぞれ1,000億円規模で買収。  日本の不動産に投資し、優良ビルも多かったのが共通点だ。シンガポールのREITが保有していた商業ビル「クリサス心斎橋」(大阪市)は 18年の公示地価で大阪圏の最高だった。  「丸ごと買いたいだって?」。17年後半、日本のREIT業界に緊張が走った。ある外資系ファンドが複数の運用会社に対し、REITの買収を提案する書簡を送ったのだ。合意に至った銘柄はなかったが、その後は保有物件の売却や自己投資口買いといった「買収防衛活動」が目立つ。  18年10月にはNTTやオリックスがそれぞれの上場不動産子会社に対してTOB(株式公開買い付け)を実施し、完全子会社にすると発表した。 両社とも不動産事業の強化を理由に挙げるが、SMBC日興証券の田沢淳一氏は「海外でのM&Aの活発化が資本関係を見直すきっかけとなった可能性はある」という。  国内金融機関がファンドの活動を後押ししている面もある。邦銀の不動産ファンド向け融資残高は18年3月末で12兆円弱と10年前から4割増加。三井住友トラスト基礎研究所が7月に実施した不動産私募ファンド調査では今後1年以内に組成予定のファンドで、「レバレッジ」に相当するLTV(有利子負債比率)が平均65.3%と、1年前より7ポイント強上昇した。負債の調達環境は「緩い」「非常に緩い」との回答が計55%を占めた。  「アパートローンは引き締まっているが、不動産会社やファンドヘの融資はむしろ旺盛だ」(大手不動産幹部)。スルガ銀行の不適切融資問題で個人投資家への融資姿勢が厳しくなった分、「プロ向け」が緩くなっているとの見方もある。  審査を厳しくする銀行もある。あおぞら銀行は「売買価格は過熱感がある。入り口の審査はとくに重視している」と指摘。不動産業向け融資は重点分野だが、残高は2年前からほぼ横ばいだ。  景気後退で賃料が下がれば返済が滞るリスクに長期間さらされているーー。日銀は10月の金融システムリポートで不動産融資にこう警鐘を鳴らしている。

日経 2018年11月08日朝刊

 

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