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不動産・住宅関連【新聞各紙記事スクラップ】

新法施行まで10日 民泊3陣営「体験」前面に 古民家1棟貸し、着付けや盆栽も

 住宅に旅行者を有料で泊める「民泊」の解禁が10日後に迫った。楽天子会社などは4日、全国の古民家を民泊施設に転用すると発表するなど、解禁をにらみユニークなサービスが相次ぐ。民泊は法施行に伴い、一時的に物件の減少が見込まれる。仲介最大手の米エアビーアンドビーなど主力3陣営は、価格の安さだけでなく「体験型」のサービスを前面に出し、需要創出につなげる。  「古民家は空き家が多いが、大人数で泊まりやすい。宿泊施設にして観光を盛り上げる」。楽天傘下で月内にも民泊サイトを始める楽天ライフルステイ(東京・千代田)と米仲介大手ホームアウェイは4日、古民家を民泊施設に転用するサービスを始めると発表した。  全国古民家再生協会(東京・港)と協力する。同協会が古民家の安全性などを鑑定。1棟を共同所有する会員制度で改修費などの出し手を募り、会員が使わない期間に民泊として貸す。年内にまず30棟の開発をめざし、国内の旅行者や訪日観光客に提供する。  訪日観光客は2017年に2,800万人を超えた。観光庁によると18年1〜3月には12%が民泊を利用した。政府は訪日客数を20年に4千万人、30年に6千万人に増やす計画を立てており、民泊は受け入れ施設を補う役割も期待されている。  外国人の旅行の楽しみ方は多様化している。以前は東京や京都、大阪といった「ゴールデンルー卜」が中心だったが、最近は温泉やスキー、陶芸など「体験型」の旅行を楽しむリピーターが増えている。15日に迫った住宅宿泊事業法(民泊新法)の施行を前に、体験を重視する「コト消費」を取り込むため異業種が手を組む動きが相次いでいる。  JTBは仲介サイトを運営する百戦錬磨(仙台市)と連携。百戦錬磨が扱う施設をJTBの訪日客向けの予約サイトで紹介する。さらに日本航空は民泊と航空券をセットで販売し、山菜採りや郷土料理作りを体験できる旅行プランを提供する。  エアビーは着物の着付けや盆栽、サイクリング、料理といった体験型のプログラムを拡充。サイト上で約1千ものメニューを予約できるようにした。ファミリーマートの店舗でカギの受け渡しを可能にするなど利便性を高めると同時に、豊富な体験型プランを用意し顧客層を広げる。  一方、各社は新法施行後に施設数が一時的に減る「新法ショック」に気をもんでいる。民泊新法では自治体に届け出れば年180日を上限に営業できる。ただ手続きが煩雑なうえ、条例でさらに厳しい規制を定める自治体も多い。これらを嫌って民泊の運営をやめる家主が増えている。  エアビーなどはこれまで、現行の国内ルールの許認可などがない施設も載せてきた。同社は施行に先立ち、そうした施設の掲載を中止。今春に約6万2,000件あった登録物件数は、足元で約1万3,800件に減った。  エアビーや楽天など各社は、既存のホテルや旅館に比べた価格の安さだけではなく、体験型プランなど付加価値を高めたサービスで需要を喚起する。現在の民泊施設は個人が所有する物件が中心だが、企業の本格参入で施設数は20年に10万件を超えるとの予測もある。

日経 2018年06月05日朝刊

 

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