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不動産・住宅関連【新聞各紙記事スクラップ】

市街地集約、活発化 コンパクトシティー政策 利便性、効率アップ狙う

 中心市街地に住宅や公共施設などを集約する「コンパクトシティー」政策の実現に向け、国や地方自治体の動きが活発化している。行き過ぎた郊外開発に歯止めをかけ、住民生活の利便性や行政サービスの効率を高めるのが狙いだ。ただ人口減少を背景に増加する空き店舗や空き家の対策など、課題は多い。  1971年に2市合併により誕生した新潟県上越市。新たな市役所の建設や北陸自動車道、北陸新幹線の開通などの影響で、大型商業施設や総合病院の郊外移転が相次ぎ、市街地の面積は約2倍に広がった。  市の推計では、2030年の人口は10年より3万人少ない17万人となる一方、除雪やインフラ維持など行政サービスの1人当たりの年間負担額は6割増の2万6千円に膨らむという。  市は「人口減少と郊外化がさらに進めば、都市として成り立たない」との危機感を抱き、17年3月にコンパクトシティー構想を公表した。合併前からの市街地など6拠点に病院や保育所、商業施設などを集める計画で「医療福祉や教育面を充実させ、住みやすいまちを目指す」(担当者)。  政府は地方都市で暮らす高齢者の生活維持や行政コスト削減のため、コンパクトシティー政策を後押しする。国土交通省と内閣府は3月、藤枝市など32市町をモデル都市に選び、交付金などで3年間、重点支援する方針だ。国交省は「地域の活力を維持し、集約効果を高めるための先進的な取り組みを各地に広めたい」と意気込む。  しかし地方都市の中心市街地では、郊外より早い時期にできた古い建物が多いこともあり、増加する空き店舗や空き家が、利便性低下や地域経済の低迷を招いている。  「一度の外出で用事が済むまち」を掲げる長野県小諸市は昨年末、新市役所の隣に図書館や総合病院を集めた。各施設の利用者数は移転前より伸びたが、近くの駅前商店街は後継者不足で空き店舗が目立つ。日中でも人通りはまばらだ。  今年1月には中心部唯一のスーパーが老朽化のため休業し「一番の核を失った」(市の担当者)。市は周辺の土地を取得し、スーパーや病児保育所などが入る複合施設を建てる計画だ。ただ完成目標は20年末で、買い物などの不便が解消されるのは2年以上先となる。  日本総合研究所の藤波匠上席主任研究員は「コンパクトシティーを打ち出した市町村であっても、郊外開発が続いている問題もある。集約する区域をより厳しく絞った上で、民間資金とアイデアで空き家や空き店舗を活用し、中心部の受け皿を増やすべきだ」と提言している。

静岡 2018年05月02日朝刊

 

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