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不動産・住宅関連【新聞各紙記事スクラップ】

太陽蓄電池 家庭用に的 売電優遇 世界で廃止・期限切れ 伊藤忠 米エネ企業に出資 シャープ 効果を訴え説明会

 家庭用蓄電池のビジネスチャンスを探る動きが広がっている。伊藤忠商事は米国で蓄電池を提供する企業に出資。欧州では蓄電池を使い家庭間で電力を融通するサービスが始まった。背景にあるのは世界中で太陽光発電の優遇策が期限切れや廃止となることだ。余った電力を高値で売れなくなった個人が、蓄電池にためて自宅向けに回すため、需要が拡大するとみられている。  日米欧には家庭向け太陽光発電を促す優遇策があり、余剰電力を電力会社に高値で買い取ってもらうことができた。それが制度の期限切れや廃止が相次ぎ売却する個人の動機づけが薄れ、発電され続ける電力の有利な処理法を探る中で蓄電池が注目されている。  伊藤忠は10月末、蓄電池ビジネスの拡大を目指して、米エネルギー企業のサンノーバ(テキサス州)に500万ドル(約6億円)を出資した。  サンノーバは家庭に太陽光パネルを無償で設置する事業を手がける。設置先の家庭に割安な価格で電気を売り、余剰分は電力会社に売却している。伊藤忠は今後、蓄電池や管理システムをサンノーバに納入し、優遇策が廃止された州の家庭中心に蓄電池を置いてもらう。高値買い取りが終わるので、蓄電池で電力をため家庭に販売する。  米国では電力会社が家庭から余剰電力を買い取り、電気代と相殺する制度を州ごとに導入する。ただ、昼間しか発電しない太陽光が増えすぎ、電力需給のバランスをとるのが難しくなったため、カリフォルニア州やハワイ州で優遇策の廃止や見直しが相次いでいる。  家庭用の太陽光発電は、ドイツが2000年に再生可能エネルギーを高く買い取る制度(FIT)を整備したことをきっかけに広がった。日本も09年にFITの前身となる制度を導入。買い取り期間が10年間の日本では19年から、20年間のドイツでは20年からFITを利用できず有利な条件で電力を買い取ってもらえない家庭が出始める。  国内ではシャープが販売店と組み、自社の太陽光パネルを設置した家庭向けに、今後についての説明会をこれまで約1千回開いた。蓄電池を使い、昼間にためた電力を夜間に使う効果などを訴え、今年度の販売台数を1万5千台と前年度の2倍に引き上げる。蓄電池スタートアップのエリーパワーも倍増の2万台、パナソニックは6割増の販売台数を目指す。  調査会社の富士経済(東京・中央)は家庭用の蓄電池の世界市場は25年に17年の約3倍の1,823億円になるとしている。  一方、先行するのは欧州だ。蓄電池にたまった余剰電力を融通し合う「電力シェアリング」というサービスが広がっている。蓄電地大手の独ゾンネンのサービスでは一定の金額を払って会員になると、送電線で他の家庭の蓄電池にたまった余剰電力を安価に購入できる。電力を売る家庭は、電力会社を通さない分、高く販売できるという。ドイツのほか、オーストリアやスイスなどに広げている。 低価格 普及の条件 災害時の電源にも需要  太陽光の余剰電力をためる需要が本格化すれば、家庭用蓄電池の普及が一気に進む可能性がある。普及の最大のネックだった価格も下落傾向にあり、よりコストを下げる技術開発も進んでいる。北海道の地震などで非常用電源としても注目されているが、もう一段の価格引き下げが市場形成のカギを握りそうだ。  リチウムイオン電池を使う蓄電池が出始めた2010年、価格は容量2.5キロワット時で約200万円だった。技術開発や部材価格の下落で現在は約100万円にまで下がったが、それでも価格が足かせとみられている。  このためコスト圧縮技術はさらに進化している。日揮は太陽光由来の電力を直流電流のまま蓄電池にためる技術を開発した。交流と直流を切り替える変換装置を不要にし蓄電池の製造コストを2〜3割圧縮した。19年秋にも国内で販売する。「非常用電源としての引き合いが急増している」(住宅設備会社)との声もあるが、費用対効果の検証は避けて通れない。

日経 2018年12月03日朝刊

 

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