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不動産・住宅関連【新聞各紙記事スクラップ】

空き家活用へ取引促す スタートアップ、物件マッチング 改修や一覧表作成

 空き家を有効活用する事業に乗り出すスタートアップ企業が増えている。空き家の物件情報をまとめたデータベースの作成や、売り手と買い手のマッチングサービスを通じて取引を促す。空き家の数は増加する見込みだが、物件ごとに事情が異なり流通には手間がかかるため、大手不動産会社は手掛けづらい。機動性を武器にスタートアップが市場をつくりつつある。  戸建て住宅や中層マンションが集まる名古屋市の住宅地。酒谷勝志さんが自転車で空き家を探し、スマートフォンに記録していた。洒谷さんは空き家のデータベースを手がける空き家活用(東京・港)の調査員だ。  同社は空き家の情報をまとめたデータベース「AKIDAS(アキダス)」を作り、住宅の改修事業者などに提供している。改修後は住宅や民泊用施設として活用される例が多いという。都内や大阪市などで約50人を動員し空き家を見つける。  調査員は郵便受けや電気メーターを確認し、空き家かどうかを判断する。自社アプリに物件の住所や状況を入力。別の職員が登記簿などから所有者の情報を追加し、空き家の一覧を作る。  アキダスには約3万件の空き家・空き地が掲載され、約70事業者が利用する。月10万〜15万円のデータベース利用料が主な売り上げだ。  空き家の改修を担うスタートアップもある。賃貸住宅の改修を手がけるハプティック(東京・渋谷)は賃貸仲介サイトのグッドルーム(同)と連携して割安な価格で中古物件を改修し、サイトで入居者を募っている。  収益の柱は1件あたり200万〜250万円の改修請負料。間取りをパターン化して設計の手間を省くほか、床材を集中購買するなどして施工費用は通常の改修よりも2割ほど抑える。  強みはグッドルームが借り手の募集を支援する点だ。改修が終わるまでに約6割の物件で入居が決まるという。両社を設立し、現在も代表取締役を務める小倉弘之氏は「借り手がすぐに決まると思えば改修に投資しやすくなる」とみる。  エアリーフロー(東京・新宿)は売り手と買い手のマッチングを手掛ける。両者を直接結びつける掲示板サイト「家いちば」を立ち上げた。  2015年の開設以来、90件以上が成約した。同社は成約時に売り手と買い手から価格に応じた手数料を受け取る。藤木哲也社長は「本当に知りたい情報を得るには直接交渉が最適」と話す。  一般の不動産サイトは専門の事業者しか載せられないが、家いちばは所有者や許可を得た人が無料で投稿可能。売却理由なども書き込めるようにした。今後は全国の不動産会社と連携してサービスを充実させる方針だ。  空き家関連の市場は拡大する見通しだ。野村総合研究所は国内の空き家の数は33年に1,955万戸と13年の2.4倍に増えると予測する。富士通総研の米山秀隆主席研究員は「今後、相続によって新耐震基準を満たした質の高い空き家が多く出回る」と指摘する。  ただ空き家ビジネスは「新築物件の販売に比べ利益率が低い」(米山氏)。大手が本格参入しない分、新興企業に商機があるが、どう利益を確保するかが問われる。  カギは好循環の創出にある。例えばエアリーフローの家いちばの場合、買い手と売り手の情報がともに増えれば、空き家流通の活性化が期待でき、コストも回収しやすくなる。潜在需要を掘り起こす戦略が大切になる。

日経 2019年02月11日朝刊

 

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