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不動産・住宅関連【新聞各紙記事スクラップ】

長野、滋賀、福井 届出1桁 民泊 中部そろって様子見 コンビニなど 関連ビジネスは活況

 自宅や賃貸物件の空き部屋に有料で旅行者を泊める「民泊」。個人でも資産を活用できると注目を集めるが、静岡県内だけでなく中部地方の各県でも届け出は低調だ。一方、訪日客の増加を背景に市場としては中長期の伸びが期待できるとして、周辺ビジネスにコンビ二大手などの参入が相次いでいる。  中部地方で最も宿泊需要が多いとみられる名古屋市では、民泊利用の届け出は23件(5月31日時点)。長野、滋賀、福井の3県は6月4日時点で1桁にとどまる。滋賀県の担当者は「問い合わせは増えている。施行後に参入する人が多いのでは」という。  なかなか届け出数が伸びない背景に、各自治体が条例で営業を制限する独自ルールが申請を複雑化している事情がある。長野県は周辺の地域住民への事前説明を事業者に求めており「準備が遅れている人がいる」(担当者)と話す。  名古屋市は、市内の2〜3割にあたる住宅専用地域での平日営業を禁止。同市の民泊業務代行会社「スリーハンドレッド」の志摩恭平社長は「様子見の人が多い」と話す。条例の制限はないものの申請数が少ない福井県は「もともと民宿が多く、新規参入しにくいのではないか」(担当者)とみており、地域事情も反映されていそうだ。  観光庁の5月11日時点の集計では、全国で724件の届け出があり、このうち中部(静岡、愛知、岐阜、三重、長野、滋賀、福井の7県と名古屋市)の比率は1割だった。  一方、関連ビジネスの動きは活発化している。コンビ二大手は民泊客を店に呼び込もうと、店を鍵の受け渡し拠点として提供する。ファミリーマートは民泊仲介最大手の米エアビーアンドビーと提携。セブンーイレブンはJTBと共同でチェックイン専用機を設置すると発表した。  楽天子会社「楽天ライフルステイ」は6月中に民泊仲介サイトを始めるとともに、米民泊仲介大手「ホームアウェイ」と提携して古民家を民泊施設に転用するサービスに乗り出す。 <Q&A 苦情対応や名簿保存 義務付け>  Q 民泊が全国で解禁される背景は。  A 外国人観光客の宿泊施設が不足しており、その受け皿にするためだ。少子高齢化に伴う空き部屋を活用する観点もある。15日施行の住宅宿泊事業法(民泊新法)は、個人や事業者が届け出れば一定の条件下で、年間180日以内の民泊を認めている。  Q 民泊を始める場合はどうするのか。  A 予約サイトなどの仲介業者は観光庁に登録し、部屋を提供する事業者も都道府県などに届け出る必要がある。オーナーなどに管理を委託される業者も国土交通省への登録が必要だ。苦情への対応や宿泊者名簿の保存、衛生の確保などを義務付けられている。  Q 今後の課題は。  A 従来は違法な「ヤミ民泊」が目立っていたが、犯罪の温床になる危険性もある。横行を許さない態勢づくりが急務だ。 【分譲マンション禁止大半 中部管理組合協「8〜9割」】  15日の民泊解禁を前に、分譲マンションの管理組合がトラブルヘの懸念から管理規約などで民泊を禁じる動きが広がっている。中部では事業者による参入も限定的とみられる。  分譲マンションでは、規約改正か総会・理事会の決議で民泊を禁止すれば、自治体への届け出は受理されない。全国マンション管理組合連合会(東京)が2月にまとめた調査では、騒音やごみの放置、暗証番号の流出などへの懸念を理由に91.5%が民泊を禁じると回答。容認は0.3%にとどまった。  中部の下部組織で193組合が加盟する中部マンション管理組合協議会(名古屋市)は今夏、各組合の対応を詳細に調べるが、遠山哲男会長は「民泊を禁じる組合は8、9割に上るだろう」と指摘。「不特定多数の自由な出入りは分譲マンションの日常生活になじまない」と強調する。協議会が組合向けに作った「民泊禁止」のステッカーは既に80枚以上売れた。  一方、オーナーが建物全体を所有する賃貸マンションなどはオーナーの裁量で民泊を実施できるため、空き家対策として民泊に乗り出す動きも出始めている。ただ、中部全体を見渡すと参入の機運は盛り上がっていない。ある不動産関係者は「年間180日の営業では採算が厳しいだろう。当面は様子見だ」と話した。

中日 2018年06月08日朝刊

 

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