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再エネ蓄電 日中2強競う 長寿命、脱炭素後押し

 再生可能エネルギー普及のカギを握る発電施設向けの蓄電池分野で、中国と日本の2大メーカーが競っている。大連融科儲能技術発展は2023年末に生産能力を3倍以上に高め、住友電気工業は小型機を開発して需要の裾野を広げる。余った電気を柔軟に貯蔵・放出して需給を安定させるのに使う。競争で価格が下がり機能も高まれば、政府や企業の脱炭素を後押ししそうだ。  業界各社が生産体制や開発を強化するのは、長寿命と安全性が強みの「レドックスフロー(RF)」と呼ぶタイプの電池。6月、中国・大連の電力会社で、風力発電など向けに大連融科が手掛けた大型電池が稼働を始めた。  蓄電容量は計40万kW時。1度の施工案件としては世界最大級とされ、電力会社などの総投資額は19億元(約380億円)に上る。  RF電池はタンクにためた電解液をポンプで循環させ、レアメタル(希少金属)であるバナジウムのイオンが蓄電・放電する仕組み。いわば「全液体型」の電池だ。最大の長所は20年以上の長い耐用年数で、電気自動車(EV)向けなどで主流のリチウムイオン電池だと10年程度とされる。  大連融科の納入実績は8月時点で約56万kW時になった。大連で稼働した設備を今後拡張し、さらに40万kW時を上乗せする。  同社は大連に年産能力が120万kW時分の電池工場を持つ。王暁麗・総経理は取材に対し「年産能力を23年末に少なくとも400万kW時に拡張する」と表明した。  同社の設立は08年で、電池分野に強い国営研究機関の系列会社が約2割出資する。調査会社ブルームバーグNEFによると、世界で設置済みのRF電池のうち、容量ベースで中国市場の割合は約60%(20年時点)。大連融科は25年に過半のシェア維持を目指し、世界でも最大手の座を盤石にしたい考えだ。  一方、01年にRF電池の実用化で先行したのが住友電工だ。22年3月には北海道電力向けに、日本で最大となる容量5万1千kW時のRF電池を納入した。米国や台湾、モロッコでも供給実績があり、総容量は合計15万9千kW時に達した。  足元のRF電池事業の規模は非開示だが「25年度までに年間売上高で100億円を目指す」(エネルギーシステム事業開発部の柴田俊和・RF電池技術部長)。RF電池の活用の場が広がるなか、住友電工が需要の取り込みで注力するのが、電池の小型化だ。  容量が100kW時ほどの小型機種の開発にめどをつけており、小規模な事業所や工場、コンビニエンスストア、老人ホームなどへの納入を目指し営業活動を始めた。発電所向けだと底面が1辺10mを超える場合が多く、専用の建屋やスペースが必要。小型機種の具体的なサイズや導入コストは未定だが、駐車場などに置ける程度にする。  太陽光や風力による発電は出力が安定しないうえ、需要に比べて供給が多すぎると地域で大停電を引き起こす。こうした再生エネの需給調整向けが推進役となり、RF電池のような定置型蓄電池の世界市場は拡大が確実視されている。富士経済(東京・中央)によると、35年に3兆4,460億円となり、21年比で2.4倍に増える見通しだ。  矢野経済研究所(東京・中野)の予測では、30年の次世代電池の世界市場でRF電池は約22%を占める。EV向けで有望視される全固体リチウムイオン電池(45%)や、レアメタルを使わない有機2次電池(24%)に次ぐ規模だ。  RF電池メーカーでは当面、主要原料のバナジウムの確保で有利な中国企業に勢いがある。米地質調査所によると、21年の世界のバナジウム生産量のうち中国が66%を占めた。大連融科のほかにも、新興の格瑞?洛孚儲能科技(遼寧省盤錦市)が7月、10億元を投じてRF電池の工場建設に着手。北京普能世紀科技(北京市)も約7万kW時分を納入済みだ。  中国企業は生産規模とコスト競争力を強みに、太陽光パネルやEV電池でも世界の上位を占めるようになった。日本エネルギー経済研究所(東京・中央)の吉田昌登・研究主幹はRF電池メーカーが世界で50〜70社に上ることに触れ「中国企業も多数参入し競争は激化するだろう」と話す。  RF電池の普及への課題は本体の大きさのほか、価格の高さだ。1kW時あたりのコストは8時間ほどの長い時間充放電できるタイプの場合、リチウムイオン電池に近づきつつある。とはいえ容量が大型なだけに総額では高くなる。バナジウムの需給も逼迫することが想定され、コスト高の要因としてついて回る。

日経 2022年08月11日朝刊

 

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