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不動産・住宅関連【新聞各紙記事スクラップ】

オフィス賃料下落 2年続く 東京都心 コロナで移転・集約

 東京都心のオフィス賃料が2年間連続で下がっている。オフィスビル仲介大手の三鬼商事(東京・中央)が10日発表した7月の平均募集賃料は、2020年7月の直近高値に比べて12%安い。新型コロナウイルス禍を受けた拠点の見直しや、リモートワークの定着で、オフィスの縮小移転や集約が続いている。  7月の都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)の平均募集賃料は3.3平方m当たり2万262円と、6月に比べて11円(0.05%)安い。下落は20年8月以降、24カ月連続。賃料の下落が2年続くのは、リーマン・ショックや東日本大震災の影響があった2008年9月から12年4月の44カ月連続以来だ。  20年以降のコロナ禍は、観光やサービスといった一部の業種に大きな打撃を与えた。特に初期は厳しい行動制限によって消費者の外食や旅行が大きく減ったため、店舗を閉じたり、オフィス集約のために移転したりする動きが強まった。  感染拡大を抑えるためのリモートワークが定着したのも大きい。在宅勤務やオフィス以外の拠点での勤務、地方に生活の拠点を置いた勤務が広がり、情報通信企業を中心にオフィス縮小や本社機能の集約が進んだ。  都心のオフィス賃料は14年以降、旺盛な需要のもとで6年半にわたって上がり続けていた。女性やシニアといった働き手が増え、企業の増床や拡張移転の動きが活発化。18年11月には都心の空室率がバブル期の1991年以来、27年ぶりに2%を下回った。下落は10年代半ばから続いたミニバブルの反動も大きい。  23年には床面積の合計で計82万平方mと、新たなオフィスの大量供給が予定されている。オフィス仲介大手、三幸エステート(東京・中央)の今関豊和チーフアナリストは「入居テナントの獲得競争激化を見据え、賃料を下げても空室を早めに埋めたいというオーナーが多い」と指摘する。  三鬼商事が同日発表した7月の空室率は6.37%と、6月比0.02ポイント下がった。20年は上昇傾向が続いたが、21年6月以降は6%台前半で小幅な上下を繰り返している。大規模ビルで移転や規模縮小による解約の動きがある一方、成約が伸びている中小のビルもある。  リーマン危機当時は金融、不動産といった従業員の多い業界で、リストラを伴うオフィスの解約が相次いだ。空室率も一時は9%前後の高水準に達した。今回はオフィスの集約が進む一方、サービス業を中心に感染収束を見越した拠点確保の動きも出てきたため、空室率の上昇は限られた。  3月下旬に行動制限が緩和され、出社勤務の比率を高める企業も増えているが、先行きの不透明感は強い。不動産サービス大手、シービーアールイー(CBRE、東京・千代田)の岩間有史リサーチディレクターは「物価高や部材不足が企業の投資意欲を抑制し、オフィス移転を保留するケースも出てきている」と指摘する。  2年に及ぶ賃料の下落によって、割安感は強まっている。現在の水準は、旺盛な需要で空室率が3%を下回っていた18年半ばと同じだ。三幸エステートの今関氏は「(IT系スタートアップ企業などの引き合いが多い)渋谷駅周辺など、一部のエリアでは賃料が上昇基調に転じる可能性もある」と指摘する。

日経 2022年08月11日朝刊

 

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