不動産だよりロゴ

不動産・住宅関連【新聞各紙記事スクラップ】

賃貸戸建て、コロナで活発 武蔵コーポや飯田GHD開発 在宅浸透、間取りに魅力

 住宅関連企業で賃貸戸建て住宅の開発の動きが広がっている。投資用物件を扱う武蔵コーポレーション(さいたま市)は埼玉県などで中古戸建てを購入・改装して居住者を募集する事業を始め、飯田グループホールディングス(GHD)も自社で賃貸戸建てに投資するファンドの組成を検討する。新型コロナウイルス禍で居住動向が変化し、マンション賃料も高騰する中、消費者の賃貸戸建てのニーズの高まりに対応する。  武蔵コーポは埼玉県や千葉県など郊外の中古戸建てを取得し、屋根やキッチンなど水回り部分を改装して貸し出している。入居者が決まると投資家に1,000万から2,000万円で売却する。  同社によると、戸建ての居住者はファミリー層が中心で、アパートの入居者に比べて長く住む傾向があるという。投資家にとっては安定収益を見込みやすく、「年6?10%程度の利回りが見込める」(武蔵コーポ)としている。  大谷義武社長は「ファミリー層を中心に広い家に住みたいニーズは根強い。最寄り駅から遠くても、駐車場付きの戸建ては人気だ」と話す。  取得する戸建ては新しい耐震基準で建てられた築25から30年、2階建てで延べ床面積100m2の物件を主な対象とする。場所にもよるが、賃料は月額7万から20万円程度を想定している。  武蔵コーポのビジネスは従来、都市部や郊外でのアパートの取得・販売が主力だった。今後、顧客動向をみながら首都圏や地方で賃貸戸建てを広げることを検討する。2年後には年間100棟を販売し、20億円の売上高を目指す。  飯田GHDは賃貸戸建てに投資するファンドの組成を検討する。2021年夏から不動産運用会社のケネディクスが首都圏で始めた賃貸戸建ての投資ファンドに参画している。実績をみて「いずれは自社で主体的に賃貸戸建てに取り組みたい」(西野弘専務)。  同社はグループ会社を通じてこれまでに数十棟規模の賃貸戸建てを手掛げているが、15年間の平均入居率が99.4%だった。西野専務は「価格を上げても入居ニーズが高く、潜在的な市場がある」と期待する。  米国で現地の不動産投資信託(REIT)と共同で賃貸戸建て住宅の大規模開発に乗り出している住友林業も今後、日本でもニーズがあるとみて参入を目指している。  国土交通省によると、21年の新設の住宅着工戸数(85万戸強)のうち、賃貸戸建ては約5,000戸にすぎない。日本は地震などの自然災害が多く、マンションに比べて経年劣化が進みやすい戸建ては管理の手間がかかることから、これまで賃貸需要は少なかった。  ここにきて各社が賃貸戸建て開発を強化する背景にあるのが、コロナ禍で変化した住宅ニーズとマンション賃料の高騰だ。テレワークが浸透する中で、最寄り駅に近いマンションを選ぶ動機がやや薄れ、駅から遠くても執務環境を整えやすい間取りの広い戸建てを選ぶ人が増えている。  新築マンションの価格高騰に連動し、賃貸マンションの賃料が上昇しているのも戸建ての賃貸需要を後押ししている。不動産サービス大手アットホーム(東京・大田)がまとめた全国主要都市の「賃貸マンション・アパート」募集家賃動向によると、東京23区の70m2超の平均家賃は4月で34万1,153円。コロナ前の20年1月と比ベ5%上がり、首都圏の全地域で上昇傾向にある。  住宅関連企業が中古戸建てを改装し、賃貸市揚に供給すれば空き家問題に新たな解決策をもたらす可能性もある。日本には約850万戸の空き家があるとされ、住宅全体の約14%とされる。東京カンテイの井出武上席主任研究員は「(マンションなどに比べて)事業収支が合いづらい点はあるものの、需要の伸び次第で事業参入を検討する個人投資家や企業が増える可能性がある」と指摘する。  ロシアのウクライナ侵攻や円安で資材価格が上昇し、住宅価格は高止まりが続く可能性がある。住宅も居住者の間で購入や賃貸、新築や中古の垣根は低くなっている。戸建てならではの広さを魅力に需要が増えれば、賃貸戸建てがさらに広がる可能性は高い。

日経 2022年06月02日朝刊

 

Copyright (C) ADvance Forward Co.,Ltd. All Rights Reserved.