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不動産・住宅関連【新聞各紙記事スクラップ】

「集住」滋賀・宮城が先行 自治体の3割どまり 地方都市再生のカギに

 持続可能な都市経営を進めるには住民の居住地を集中させる「集住」が欠かせない。2020年の国勢調査を基に日本経済新聞社が集住率を算出したところ、10年比で向上した市区町村は3割の542にとどまることが分かった。滋賀県、宮城県など上昇上位の自治体は、市街地の利便性を高めることなどで誘導する。限られた資源をいかに効率的に活用できるかが、地域再生のカギとなる。  総務省の国勢調査人口等基本集計を使い、1F当たり4,000人以上といった条件を満たす人口集中地区の人口を全域の人口で割り算出した。国土面積のわずか4%弱の人口集中地区に、7割の国民が居住する。一方、都道府県別にみると、東京都(98.6%)から島根県(25.6%)まで大きな地域差がある。  集住は公共投資や行政サービスの集中配分を可能とすることから、人口が減少し税収も縮小していく中で、生産性を向上させる不可欠な政策とされる。住民にとっても子育てや医療などの利用環境向上に加え、商業施設などの立地も見込め、生活の質を保ちやすい。  最も集住率を高めたのは磁賀県。6.6ポイント上昇し、53.3%となった。以下、宮城県(5.6ポイント上昇)、佐賀県(5.1ポイント上昇)が続く。集住率の向上と経済成長は連動する傾向があり、上位3県の実質県内総生産(GDP、18年度)の対10年度伸び率は、いずれも全国平均(8.9%)を上回り、10%台を記録した。  1位の滋賀県では、全19市町のうち、11市町が「コンパクトシティー」を目指し、「立地適正化計画」を作成中か公表済み。県が旗振り役となり集住を後押しする。  草津市では計画で定めたJR草津駅近くの居住誘導区域内などに17年、長さ計2kmの「草津川跡地公園」を整備。ファミリー層を中心に環境の良さをアピールした。JR南草津駅周辺でも宅地造成(926戸)を支援し、住民を呼び込む。集住率は80.4%と、10年間で12.3ポイント上昇した。同県湖南市も17年、JR甲西駅周辺などに居住を誘導する計画を公表。16.2ポイント上昇の53.6%となった。  2位の宮城県では11年の東日本大震災の経験を踏まえ、「都市計画区域マスタープラン」を改定。 交通の要所に都市機能を集約させることで、環境向上を促した。  4位の福井県は市町村の立地適正化計画策定割合が6割超で全国トップ。全市町中11市町が計画を公表した。10位の大分県も公表済みの4市に加え、作成中が10市町あり、全18市町村の8割が集住促進に取り組む。  集住率を高めた市町村のうち、上昇幅が最も大きいのは岩手県矢巾町。45.4ポイント上昇した。隣接の盛岡市から19年、若手医科大学付属病院が移転。関係者が移り住み、集住が進んだ。「マンションやアパートが中心部で目に見えて増えた」と同町担当者は指摘する。  次世代型路面電車の整備を通じてコンパクトシティーを推進してきた富山市は、人口が1.9%減少する中、集住率は逆に6.7ポイント上昇した。駅前再開発ビルを起点に融雪道路を整備する青森市も、人口が8.1%減少する一方で、集住率は3.0ポイント高まった。 人口集中地区 地方で面積拡大目立つ ▽・・・人口密度が際立って高い市街地を指す。総務省が5年ごとに公表する国勢調査で指定する。全国を約106万に分けた調査区ごとに人口密度を計算し、1I当たり4,000人以上の調査区が隣り合わせで存在し、その調査区の合計で人口が5,000人以上になるのが指定の条件。人口密度の全国平均が338人のため、10倍以上高いエリアが選ばれる。集住が進むほど拡大する。 ▽・・・人口集中地区の面積は全国で約1万3,000Iあり、総面積に占める割合は4%弱。指定を始めた1960年以降、拡大し続けている。人口が着実に増えていた60〜80年代は自然と市街地に人が集まり人口集中地区の面積も広がっていたが、90年代に人口が伸び悩み始めると面積拡大のペースは緩んだ。2010年に人口がピークを迎え、縮小に転じる懸念もあったが、10〜20年の10年間は総人口が1.5%減少したにもかかわらず人口集中地区の面積は4.0%拡大した。 ▽・・・面積拡大は地方で目立っている。地方圏の39道県で集計すると、人口集中地区の面積は同じ期間に4.8%増えており、増加率が三大都市圏の8都府県(3.1%)より高かった。最も拡大したのは佐賀県で22.8%増。滋賀県が20.3%増で続いた。東京都は1.6%増、大阪府は2.2%増だった。

日経 2022年01月08日朝刊

 

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