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SBS、通販向け物流参入 30年までに拠点15ヵ所建設 市場拡大で1,600億円投資

 大都市圏で物流施設の建設が相次ぐ。SBSホールディングス(HD)は電子商取引(EC)宅配物流に本格参入し、2030年までに約1,600億円を投じて首都圏にEC荷物専用の拠点を15カ所ほど新設する。日本GLP(東京・港)も神奈川県や埼玉県、大阪府や兵庫県で計12棟を新設する。オフィス需要が落ち込む中、今後も成長が期待できるネット通販用物流施設向けに資金が集まる構図が鮮明になってきた。  SBSは首都圏に3万FほどのEC専用倉庫を15カ所ほど新設する。自動棚搬送ロボットや、保管荷物を自動でピッキングするコンテナ「オートストア」など最新の設備を導入する。拠点内で荷主のEC製品の撮影やサイト運営も手掛ける。1拠点につき建設費として100億円、ロボット設備に10億円を想定している。詳細な着工時期などは今後詰める。  同社の主力事業は首都圏を中心とした企業間の即日配送や物流業務の一括受託など企業向けだ。 積極投資で、足元で200億円程度のEC事業を30年までに1,000億円規模まで拡大させ、第2の事業の柱にする考えだ。20年12月期の連結売上高は2,600億円で、EC宅配事業の売上高比率は8%にとどまるが、比率を大幅に高める。  今回投資する設備はこれからECに参入する年商5億?10億円ほどの製造業者や小売業が対象で、既存の宅配大手が扱わない少量荷物の即日宅配などの需要を取り込む。企業間物流で培った配送網を活用する。  EC宅配市場の拡大が参入の背景にある。経済産業省によると20年の消費者向け物流の市場規模(物販系)は12兆2,300億円と19年(10兆500億円)から22%増。直近5年間の平均伸び率(8%)より急拡大した。SBS幹部は「製品数が少ない小規模EC事業者は大手宅配に即日配送などを依頼しにくいため商機がある」とみる。  SBS以外の物流不動産開発大手や企業も投資を加速する。日本GLPは21年、2,500億円規模を投じて物流施設15棟を開発すると発表した。そのうち、1,300億円以上を投じ12棟を首都圏や大阪圏に置く。EC事業拡大に動く小売業界も自ら物流投資に動いており、ニトリホールディングスは通販の拡大で物流投資に今後2,000億円を投じることを決めた。  不動産サービス大手のジョーンズラングラサール(JLL)によると、物流施設への20年の投資額は約1兆4千億円と過去最大だった。不動産投資額全体に占める割合も31%とオフィス投資額(32%)と並ぶ規模となった。14〜19年の不動産投資総額に占める物流施設の割合は6〜19%とオフィス(40〜55%)に大きく水をあけられていた。  21年9月末までの物流施設への投資額は4千億円と全体に占める割合は13%まで下落したが、物流施設の価格が今後も高騰する見込みのため、一部で売り控える動きが出たことが大きい。JLLの谷口学チーフアナリストは「新型コロナウイルス禍で20年になって物流施設への投資が急拡大した。今後も増加し、オフィス投資との拮抗が続く可能性がある」と分析する。  物流施設のテナント契約は長いもので10〜20年となるものもあるなど、オフィス(2〜5年)と比べて長く、投資家は安定した収益を期待できる。JLLによると20年の物流施設の空室率は0.2%と15年(6.5%)から急減している。21年も1%ほどと高い需要が続いたもようだ。  コロナ禍でのオフィス需要減少も物流施設への投資を後押ししている。オフィスビル仲介大手の三鬼商事(東京・中央)によると、千代田区や中央区など東京都心5区の21年11月のオフィス空室率は6.35%。前月よりも0.12ポイント下がったが、20年3月(1.5%)から21年10月まで20カ月連続で上昇していた。  JLLの21年7月時点の推計では、23年の東京圏の物流施設の供給面積は352万平方mと20年(215万平方m)から6割増えるとしている。さらに今後は全国規模に拡大する可能性もある。GLPが21年10月に設立を発表した投資ファンドでは4,000億円超の調達を見込み、施設開発を全国に拡大する計画だ。 首都圏は地価や賃料上昇が続く可能性があり、今後、地方にも建設ラッシュが波及する可能性もある。

日経 2022年01月04日朝刊

 

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