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不動産・住宅関連【新聞各紙記事スクラップ】

REIT 復調の予感 分配金利回り 8年ぶり高水準 オフィス型 そろり買い

 軟調相場が続いてきた不動産投資信託(REIT)に対してそろり買いを入れる投資家が増えている。これまでの価格下落に伴い予想分配金利回りが8年ぶりの水準に高まり、相対的な妙味が出てきた。利回り資産を渇望する投資家の買いによってREIT相場に転機がくるのは近いかもしれない。  「オフィス型REITの一角を最近、買い増した」。ある地方銀行の運用担当者は打ち明ける。 コロナ下では通販需要増という好材料のある物流施設型REITを中心に選別してきた。オフィス型は「分配金利回りの水準が上がり、投資可能だと判断した」という。  東証REIT指数はコロナ禍の影響から3月に急落。夏場にいったん回復しかけたが、その後は さえない。個別銘柄をみても物流型を除き、多くの銘柄で投資口価格が下がってきた。特にきつかったのが賃貸オフィスで運用する銘柄。時価総額最大の日本ビルファンド投資法人は年初から3割安い。  だが投資家の一部は好機が近いとみる。軟調相場が続いた結果、予想分配金を足元の投資口価格で割った分配金利回りは大幅に高くなった。平均利回りは4.2%(加重平均)。2012年以来の高水準だ。REITは定期的な分配金を目当てに買う投資家が多い。東京証券取引所が発表した投資部門別売買状況によると、10月は銀行が235億円を買い越し、主要な買い手に浮上している。  都心部のオフィス市況自体は悪化している。オフィス仲介大手の三鬼商事(東京・中央)によると、東京都心5区の10月の空室率は3.93%と前月から0.5ポイント上昇。平均賃料も3カ月連続で下落した。  それでも市場では楽観論がじわり広がる。SBI証券の並木幹郎シニアアナリストは「マクロの空室率は上がっているがREITが保有する物件に限ると影響は限られる」とみる。比較的優良な物件を組み入れる銘柄は少なくない。  日本ビルファンド投資法人の場合、20年7〜12月期の賃料収入は1〜6月期に比べてむしろ増える見通しだ。空室があれば入室を考える引き合いは絶えず、21年6月末の空室率は2%にとどまるとみる。三井住友トラスト・アセットマネジメントの太田素資運用執行役は「主要なREITの収益力はさほど悪化していない」と強気だ。  ではREIT相場の本格反転はいつになるのか。太田氏は「12月が最初の節目になりうる」と読む。日本のREITは海外の代表的な株価指数の一つ、FTSEグローバル株式指数に9月以降3カ月ごとに組み入れされていく。  それに伴い9月は推定で約700億円の買い需要があったが、銀行による持ち高縮小の売りによって打ち消された。分配金に魅力が出てきたことで次回12月に注目する声が多い。  株式のPBR(株価純資産倍率)に相当するNAV倍率は平均0.95倍と過去10年平均の1.1倍を下回る。銘柄によっては「コロナ禍による市況悪化の影響が保有物件に及び、増収ペースが落ちる」(UBS証券の竹内一史シニアアナリスト)だろう。それでも今からイールド・ハンティング(利回り狩り)に手ぐすねをひく投資家は多い。 

日経 2020年11月14日朝刊

 

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