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不動産・住宅関連【新聞各紙記事スクラップ】

住宅ローン「最適」提案 フィンテック企業と銀行連携 アプリで完結、審査効率化

 住宅ローンの顧客開拓でフィンテック企業と銀行との連携が広がっている。フィンテック企業が借り手のデータに合わせて適したローンを提案し、金融機関につなぐ。新型コロナウイルスの影響で営業戦略の再構築を迫られるなか、効率的に顧客との接点を増やすための協業が加速しそうだ。  お客様に合った住宅ローン商品の提案書をお送りします--。アプリのチャットで送られてきた提案書から金融機関の商品を1つ選び、専門家に相談しながら申し込み手続きを進める。借り手は金融機関に足を運ばなくても手続きが完了する。  このサービスを展開するのは「住宅ローンテック」を手掛けるiYell(イエール、東京・渋谷)。2千社を超える住宅事業者が導入するアプリ「いえーる ダンドリ」で、購入者の住宅ローンの相談やスケジュール管理、申し込みなどを助ける。アプリを通じて住宅ローン商品を提案し、連携する100を超える金融機関につなぐ。同業のMFS(同・千代田)もアプリ「モゲチェック」で人工知能(AI)で顧客の属性にあった商品を提案するサービスを手掛けている。  両社が裏側で駆使するのはAIだ。過去の成約データなどに基づいて構築した分析モデルを使い借り手の職業や雇用形態、職種、年齢、購入物件の特徴などから、買い手の住宅ローン審査の「通りやすさ」を判定する。  住宅ローンは中立的立場で相談に乗る窓口が少なく、金融機関選びが難しい。本来はより低い金利のローンを借りられるのに高い金利を払い続けている人も少なくない。逆に自身の信用力を把握しないままネットで低金利のローンを選び、審査に落ちて借りることを諦めてしまう人もいる。  フィンテック企業は利便性を高めるとともに、銀行に新たな顧客との接点を提供する。超低金利が長引く中、銀行は住宅ローンでも営業効率化やネットを通じた融資に軸足に移している。自前主義にこだわらず顧客獲得のチャネルを増やす打開策として、新たな協業が広がっている。  みずほ銀行は6月からイエールと連携を始めた。手間なく顧客との接点が増え、「ネットを通じた申し込みを増やす新たな切り口として期待する」(みずほ銀の個人マーケティング推進部)。5月中旬にMFSと連携を始めた常陽銀行では、開始後1カ月で約20件を契約した。事前にAIで絞り込むため、審査に落ちる人が少ない点も効率化につながる。18年からMFSと連携するイオン銀行は「案件の承認確度も高い」と評価する。  住宅ローン市場が日本の約10倍の米国では、個人からオンラインで資金を募るなど「モーゲージテック」と呼ばれる企業が約50社ある。日本のスタートアップはまだ数社で、成長余地は大きい。国内住宅ローンテック企業の現在の事業は銀行と競合する部分も少なく、決済などの分野と比べて協業を進めやすい。  イエールは顧客紹介にとどまらず、金融機関の住宅ローン業務のデジタル化も支援する。例えば三菱UFJ信託銀行には社員が常駐し、AIのデータ分析を使った商品の開発に取り組んでいる。  MFSの中山田明最高経営責任者(CEO)は「新型コロナを機にオンライン化の流れは強まる」とみて銀行との連携拡大を目指す。銀行の住宅ローン取引は依然として紙やファクスでのやり取りが多い。顧客の利便性向上と業務効率化の両面で連携が進めば、銀行の営業体制そのものを変える契機にもなりそうだ。

日経 2020年06月18日朝刊

 

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