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不動産・住宅関連【新聞各紙記事スクラップ】

民泊、新規需要を模索 法施行2年 コロナで訪日客急減 テレワーク拠点/医療従事者宿泊

 住宅の空き部屋を有料の宿泊施設にできる住宅宿泊事業法(民泊新法)が2018年に施行されてから、15日で2年を迎えた。訪日観光客の増加で急成長したが、新型コロナウイルス禍で足元の需要は急減。医療関連の宿泊などに活路を見いだそうとしている。  訪日観光客に人気の観光地、大阪市中心部。繁華街にほど近い浪速区のマンションの一室で民泊を営むある事業者は、「いままでは訪日客を当てにしていたが、宿泊が減り資金繰りがとても厳しい」と嘆く。コロナ前はインバウンドの利用者が8割を占めていたが、国外からの渡航が制限され稼働率は10%台に落ち込む。    観光資源が多い大阪市は、16年に国家戦略特区法に基づく「特区民泊」制度がスタートするなど、民泊が盛んなエリアだ。別の大阪市の民泊の運営代行会社では、部屋の所有者などの半数以上から、一時的な賃貸への変更希望が相次いでいる。  観光庁によると、5月の国内の民泊戸数は前月比1%減の2万1,176件と、民泊新法の施行以降で初めて前月を下回った。2〜3月の民泊宿泊者数は17万5,485人と、半年前の19年8〜9月と比べ半減した。大阪府は1万741人と同7割減少している。  沖縄や北海道などで民泊を200室手掛けていた東京都のある民泊事業者は現在、40室程度まで 民泊物件を縮小。宿泊料の減額も余儀なくされている。「訪日客需要は少なくとも今後1年は戻ってこない」(民泊事業者社長)と予測する。  民泊事業者は新たな需要の掘り起こしに動く。MATSUDO(千葉県松戸市)は管理する9部屋を新型コロナ対応にあたる医師や看護師らの宿泊場所として、同市に貸し出した。他の住人らの理解は得ており、医療従事者の退居時は部屋の消毒を徹底する。  旅行比較サイト運営のベンチャーリパブリック(東京・港)によると、同社のサイトを通じた国内の5月の民泊の予約は前年同月比で4割増加した。千葉県勝浦市や茨城県つくば市といった東京都の近郊に加え、長野県・白馬、富山県など地方で予約が増えている。  同社によると、国内居住の外国人を中心に都心を避け郊外に住む需要がある。郊外で長期滞在してテレワークする「ワーケーション」としての用途も増えたもようだ。ベンチャーリパブリックの柴田啓社長は「感染の第2波、第3波への不安は続く。地方の民泊を求める需要が高まるだろう」と説明する。  海外は民泊需要の回復の兆しが出ている。民泊仲介大手の米エアビーアンドビーは、直近で国内旅行に伴う予約が世界全体で前年同期を上回った。短期旅行のほか、医療従事者のコロナ感染防止の利用もみられる。  19日には県境を越える移動の自粛要請が解除される見通しだ。観光業界は比較的近距離の旅行の需要増を期待する。  もっとも、国内の民泊は、営業日数が年間180日以下など規制がある。「コロナ後の利用者の宿泊の選択肢を広げるため、規制はできるだけ撤廃してほしい」(民泊事業者)との声が根強い。

日経 2020年06月16日朝刊

 

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