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不動産・住宅関連【新聞各紙記事スクラップ】

家賃減免 交渉が長期化 再開後も収入戻らず 店舗閉鎖の増加懸念

 外食など事業者と家主との家賃減免交渉が長期化している。緊急事態宣言の解除後も収入が戻らず、長期の減額を求めるテナントが多い。政府がまとめた「家賃支援給付金」は、多店舗経営の事業者には十分な支援にならない見通し。交渉次第で店舗閉鎖が広がりかねない。  居酒屋チェーン大手のワタミは約400の直営店で家賃の3割減額を要請中だ。7月末までの家賃が対象で、すでに3分の1の家主が一定程度の減額を受け入れた。今後は2021年3月までの家賃の引き下げを求め、受け入れられずに利益の出ない店舗は閉店する。  新潟県が地盤の居酒屋チェーンのよね蔵グループは、19年末に大手町駅(東京・千代田)に開いた新店の家賃について、3カ月にわたって減免を求めたが、不動産会社は応じなかったという。客足の回復は鈍く「半年この状態が続けば撤退しなければならない」(同グループ)。減額を求めて交渉を続ける。  第一生命経済研究所の熊野英生氏の試算では、法人が支払う賃料は年間で約20兆円。小売りや飲食などがその4割を占める。休業や営業時間短縮による減収を受けて4月から本格化した交渉に終わりが見えない。  家主には減免を受け入れる動きもある。三井不動産は4月ごろから、商業施設「ららぽーと」を休業し、テナントの家賃を原則免除した。営業再開後は個別に対応する。  一方、一等地の物件が多いある大手は「強気に出られる。減免には応じない」と話す。一般に不動産投資家は購入代金の5〜9割を借入金でまかない金利負担が重く、個人オーナーの動きも鈍い。  ある不動産投資家は、都内の外食テナントの減免要請にひとまず敷金を補?して応じた。その後、閉店も視野に家賃引き下げを交渉しているが、「多店舗で経営しているテナントのため、自分のビルだけ応じても延命にはつながらない」と受け入れない方向だ。  2次補正予算案の家賃支援給付金は、5月から12月にかけて売上高が大幅に減った中堅・中小法人や個人事業主が対象だ。法人は最大で月100万円、個人事業主は50万円を現金で支給する。  店舗を家主から借りて飲食店に転貸するテンポイノベーションの志村洋平専務は「1店舗で従業員も少ないテナントには効果が大きいが、数十店舗を経営する大手には焼け石に水」と話す。首都圏を中心に約20店を展開するパンケーキチェーンは給付金を活用する方針だが足りない。売り上げは前年より9割以上減っており、5店舗前後を閉鎖する検討に入った。  不動産業界では「営業を再開したテナントが、やはり厳しいと判断して撤退する例が夏から秋に増える」との観測が広がっている。2次補正予算案の支援金は約2兆円。野村総合研究所の木内登英氏は、個人消費の落ち込みから試算し、家賃支援は総額7.1兆円が必要になると計算する。  減免に応じた家主への支援策を自治体が独自でまとめる動きが出ており、例えば神戸市では最大200万円を助成する。多様な支援で支えなければ雇用や不動産市況の悪化も招きかねない。

日経 2020年06月12日朝刊

 

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