新型コロナウイルスの感染拡大に伴い長期金利が低下している。米国では過去最低に迫る1.3%台まで低下し、日本でも3カ月ぶりの水準に下がった。景気減速懸念から安全資産とされる債券に資金が流れ込んでいるためだ。ただ米国に比べ日本の下げ幅が小さいのは、市場が日銀の追加緩和余地は乏しいとみていることを反映している。
25日の国内債券市場で長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りは前週末比0.045%低いマイナス0.105%まで低下(価格は上昇)した。米長期金利も前日、2016年7月につけた過去最低(1.32%)に迫る1.35%まで下がった。リスク回避に伴う債券買いが背景だが、日米の下げ幅の違いはどこからくるのか。
「必要が出ればちゅうちょなく追加緩和する」。新型コロナウイルスの影響が広がって以降、日銀の黒田東彦総裁は繰り返しこう発言してきた。ただモルガン・スタンレーMUFG証券の杉崎弘一氏は「市場は日銀の『ちゅうちょなく』という言葉を信用しておらず、利回りがマイナス圏に沈む10年債を買い進める理由は乏しい」と話す。
日銀が追加緩和でマイナス金利を深掘りするとみれば、長期金利にも低下圧力がかかる。ただ利下げ余地が残る米連邦準備理事会(FRB)と異なり、多くの副作用を抱えているうえ効果も懐疑的なマイナス金利の深掘りに動くとみている市場参加者は少ない。
金利が低下(価格は上昇)すると見込まない限り、マイナス金利の債券を購入する経済合理性はない。日本の長期金利はマイナス金利の深掘りに市場が身構えていた19年9月にマイナス0.295%まで下がった。今回の長期金利の動きは、市場が日銀の金融政策の限界を見透かしている裏返しかもしれない。
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