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「高い再生エネ」優遇見直し コスト競争へ改正案閣議決定 送電線接続、普及の壁に

「高い再生可能エネルギー」を生んでいる優遇策の見直しが動き出す。政府は25日に閣議決定した法改正案で、太陽光や風力の発電事業者から一律の価格で電力を買い取る制度を見直し、市場の需給に応じた価格に補助金を上乗せする仕組みに改める方針だ。欧州で先行する取り組みで、競争を通じて国民負担につながるコストを減らすことをめざす。再生エネの本格普及を探る試みだが、送電線の空き不足など非効率な電力システムが壁となる。  現行の固定価格買い取り制度(FIT)は2012年に始まった。11年の東日本大震災や福島第1原子力発電所の事故を受けて再生エネの導入機運が高まり、新規参入を促すため、大手電力が同じ価格で電力を買い取ってきた。家庭や企業などが払う電気料金に「賦課金」を上乗せし、買い取り費用を賄う仕組みだ。  当初、事業用太陽光の買い取り価格は1kW時あたり40円と海外に比べて割高に設定された。年々引き下げ、20年度には12円となるものの、一律価格で買い取るのでコスト抑制の効果は乏しい。国民負担は膨らみ、19年度の買い取り費用のうち家庭や企業に転嫁する分は約2.4兆円に上る。  これに代わり、新たに導入する制度は「FIP」と呼ばれ、発電事業者が自ら販売先を見つけたり、電力卸売市場で売ったりする。発電した全量を決まった価格で買い取ってもらえる現行制度と異なり、市場動向を見極めながらコストを下げる競争が期待できる。市場価格に一定の補助を上乗せするため、発電事業者にとっては投資回収の見通しが立ちやすい。  海外では欧州諸国を中心にFIPの導入が進んでいる。すでに再生エネの開拓期から普及期に入り、2000年にFITを導入したドイツは14年から大部分をFIPに変更。独フラウンホーファー研究機構太陽エネルギー研究所によると、19年の発電量に占める再生エネ比率は46%となり、化石燃料を上回っている。デンマークもFIPを採用し、風力を中心に再生エネの普及率が高い。  一方、経済産業省によると、日本は18年度の電源構成に占める再生エネの比率は16.9%。11年度(10.4%)から上がったが、政府が30年までに22〜24%としている目標や各国の現状と比べると普及は遅れている。大きな要因はコストだ。  日本における1kW時の買い取り価格は大規模太陽光が12.9円、風力が19円。これに対し、ドイツはそれぞれ6.8円、6.9円で、再生エネが「安いから使う」という環境が整っている。  今回の法改正案では現行のFITからFIPに切り替える具体的な時期や対象となる電源について明記していないが、経産省はまず大規模な事業用太陽光の発電事業者を対象とし、風力の事業者を順次対象に加える方針だ。東京大学の高村ゆかり教授は「再生エネの導入を止めないよう、電源ごとに導入時期を見極める必要がある」という。  もっとも、再生エネの本格的な普及には壁が残る。日本では送電線網は大手電力が整備し、停電などの非常時に備えて原則として普段はピークの半分の容量しか使わない。稼働していない原発のために容量を確保する事態が生じ、再生エネが送電線網に接続しにくい原因となっている。  都留文科大の高橋洋教授は「欧州と異なり、再生エネにとって公平な市場環境が確保されていない」とみる。東京電力ホールディングスは送電容量が逼迫した際、一時的な出力抑制に応じることを前提に送電線の使用枠を再生エネ事業者などに開放する取り組みを始めた。再生エネを主力電源に育てるには総合的なコスト減につながる電力システム改革が必要だ。 【FITとFIP】  太陽光や風力など再生可能エネルギーの普及をめざし、国が決めた一律の価格で電力を買い取る制度を英語で「フィード・イン・タリフ(『Feed in Tariff)」と呼び、「FIT」と略す。日本は2012年に導入した。一方、電力は市場価格で売り買いし、事業者に一定の補助金を出す仕組み「フィード・イン・プレミアム(『Feed in Premium)」は「FIP」と呼ぶ。再生エネの普及拡大に向け、競争によるコスト削減が期待される。

日経 2020年02月26日朝刊

 

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