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不動産・住宅関連【新聞各紙記事スクラップ】

サ高住などで接客や農作業 高齢者、住みながら働く 生きがい・収入獲得

 高齢者向け施設で、入居者が働いて収入を得る機会を設ける動きが広がっている。要介護度が低い人らに軽作業や接客の仕事を提供し、生きがいを感じたり、生活費を補ったりしてもらう。「老後資金2,000万円問題」などで高齢世帯の生活資金への関心が高まるなか、住まいとともに働く場を提供する施設が増える可能性がある。  千葉県船橋市にあるサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)「銀木犀(ぎんもくせい)」に2019年5月、一般客も利用できる豚しゃぶレストランが併設された。施設を運営するシルバーウッド(同県浦安市)がフランチャイズ契約を結び、入所者ら4人が調理や接客の担当者として働く。店長は介護職の経験者が務めている。  時給930円は千葉県内の最低賃金を上回る。野菜の盛り付け役の宮川和枝さん(84)は「体調に気を使ってもらいながら働いている。給与が楽しみだし、独りで過ごす時間が減った」と笑う。  介護事業のリールステージ(奈良市)は運営するサ高住など高齢者施設の入居者に袋詰めなど軽作業で働いてもらう事業を始めた。19年に同社が設けた合同会社が外部から作業を受託し、要介護度がおおむね「要支援1」から「要介護2」の高齢者のうち、働きたい人に割り振る。  作業時間は1日1〜2時間で、月収は数千円から1万円程度。現在は約40人が働く。入所者に生活の張り合いとしてもらうとともに、合同会社の収益化を目指す。現在の月商は20万円程度だが、将来は100万円に増やす目標だ。  有料老人ホームを運営する社会福祉法人「伸こう福祉会」(横浜市)は農作物を栽培する仕事を提供している。神奈川県内で農地を借り、看護師が健康管理しつつ葉物野菜を育ててもらい、地元レストランに出荷する。「就労意欲を高めるのに給与に勝るものはない」(同法人)。1時間300円で約15人が働く。  介護業界は人手不足が深刻だ。19年の介護サービス職の有効求人倍率(原数値)は4.31倍と、全職業の1.45倍を大きく上回る。入所者に働いてもらい、施設内の人手を補う試みもある。  萌福祉サービス(札幌市)は18年、有料老人ホームの入居者に、皿洗いや掃除などを手伝ってもらうと、現金に交換できるポイントを付与する制度を導入した。  「孫への贈り物に使う人も多い」(同社)。やりがいを見いだした高齢者が活力を取り戻し、約半年で要介護度が要介護1から要支援2に改善する例もあるという。参加が増えれば職員が業務に専念しやすくなる。  リクルートジョブズによる18年の調査で、60〜74歳の約6千人に「何歳まで働きたいか」聞いたところ「70〜74歳」が39%と最も多く、「75〜79歳」(25%)が続いた。 就労したい理由(複数回答)は「生計維持」が37%で、高齢になっても収入を得たいと考えるシニアは多い。  日本総合研究所の安井洋輔主任研究員は「報酬はやりがいを高めるが、健康状態などを把握する施設側の配慮が欠かせない」と指摘している。

日経 2020年02月23日朝刊

 

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