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不動産・住宅関連【新聞各紙記事スクラップ】

建設用鋼材が一段安 H形鋼2% 都市開発の停滞響く

 建設用の鋼材の流通価格が一段安となった。建物の梁(はり)や柱に使うH形鋼は前月比で2%安く、マンションの鉄筋に使う異形棒鋼も3%下落した。最需要期の秋になり土木用は公共投資増を背景に復調の兆しがあるが、建築用は夏までの荷動き停滞を引きずる形で出荷ペースは盛り上がりを欠いている。  東京地区のH形鋼の流通価格は1トン8万5,000円前後。前月比で2,000円(約2%)安い。今春までは1トン9万円前後という10年ぶりの高値圏だったが、今夏に入り下落に転じ、秋の需要期になってもじり安の基調を抜け出せない。  年度の下半期が始まる秋は企業の投資や公共投資が活発になりやすく鋼材を含む建設資材の需要が盛り上がるため、「秋需」と呼ばれる。夏場から気温が低下し建設作業ペースが回復することも需要を押し上げる。  鉄鋼商社のH形鋼担当者は「秋需も出てはいるが、荷動きは昨年の7割ほどにとどまっている」と指摘する。昨年は2020年開催の東京五輪に関連した施設やホテルなど旺盛な建築分野の需要を支えに好況が続いた。  ただ、今春から五輪関連需要が一巡したほか、ボルトなどの部材不足に伴い、都市開発の工事が停滞している。H形鋼の市中在庫は需給均衡の目安とされる20万トンを超えるようになった。  メーカーの生産調整により市中在庫は9月末時点で20万トンを下回っているものの、需要に力強さがない。9月の台風で日本製鉄のH形鋼の生産が一部停滞し、供給不安もある。ただ「一部品種に品薄感もあるが、全体の需給を引き締めるほどの材料にはなっていない」(鉄鋼商社)。  H形鋼に加え、鉄骨造(S造)の建物で補強柱などに使われる山形鋼やみぞ形鋼も約2%下落した。「少ない秋需を巡り、価格を下げて注文をとろうという心理も働きやすくなっている」(都内の鉄鋼問屋)。下値が切り下がり、相場を押し下げている。  マンションなどの鉄筋コンクリート造(RC造)に向けた出荷も鈍い。異形棒鋼の東京地区の流通価格(16mm品・大口需要家渡し)は1トン7万円前後で、前月より2,000円(約3%)下落した。棒鋼を電炉で生産する際の原料となる鉄スクラップの価格が下落していることもあり、「需要家である建設業界からの値下げ要請が強まっている」(鉄鋼商社)。  鉄筋用の棒鋼などをつくる電炉の鉄鋼メーカーで構成する普通鋼電炉工業会の渡辺誠会長(JFE条鋼社長)は「需要に見合った生産が重要」と話す。  今春半ばからの荷動きの停滞を反映し、電炉大手の東京製鉄は今夏以降、毎月公表するH形鋼や異形棒鋼の販売価格を2度引き下げた。電炉の値下げ姿勢も流通市場での販価の下押し要因になっている。

日経 2019年10月25日朝刊

 

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