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不動産・住宅関連【新聞各紙記事スクラップ】

不動産融資 進む小口化 新生銀、保育所に/政投銀は学生寮 ビル値上がりでシフト

 銀行の不動産融資が小口案件にシフトしている。主な対象だったオフィスビルは物件価格が値上がりして、融資しても収益を得にくくなっている。このため事業ごとに融資をする仕組みなどを使い、保育所や学生寮など小型の案件を対象にする動きが広がってきた。社会的なニーズにも沿うが、景気低迷時は売却が難しく、重荷になる可能性もはらむ。  新生銀行は今夏、都内の複数の認可保育所を対象とした数億円のノンリコースローン(非遡及型融資)を実行した。銀行の融資と投資家の資金で特別目的会社(SPC)を立ち上げるこの仕組みでは、融資の利率は開発した不動産業者の信用リスクではなく、物件の収益性などから決める。銀行は資産査定や審査に手間をかける分だけ、組成時の手数料や上乗せ金利を見込める。  待機児童問題などで保育所の新設ニーズは高い。だが小規模な運営事業者が自ら施設を建てようとしても、銀行融資を受けにくいことがある。今後、同様のスキームを活用すれば、運営業者が資金調達をしやすくなる可能性がある。  日本政策投資銀行(政投銀)も今春、東京都大田区にある工場向けの共同施設を対象とする22億円のノンリコースローンを実行した。物件は大田区が20年間借り、中小企業に貸し出す。信頼のある行政が運営にかかわることで融資がしやすくなった。政投銀では学生寮やサービス付き高齢者住宅などのノンリコースローンも実行している。「学生寮などは留学生の増加が見込まれ、海外からの投資意欲も高い」(政投銀)という。  銀行が投資対象を広げる背景には、値上がりしたオフィスビルの取引が鈍っていることがある。都市未来総合研究所が適時開示などから集計したところ、1〜8月の国内オフィスビルの売買額は約6,960億円。通年では昨年1年間のオフィスビル取引額は超えそうだが、不動産取引全体に占める比率は33%と18年に比べ10ポイント低い。  保育所や高齢者向け住宅はオフィスビルなどとは異なり、運営事業者の信用性やサービスの質なども融資の審査で問われることになる。オフィスビルなどに比べて、経済環境の悪化で売買の流動性が低下する恐れもある。リスク管理能力や金利設定など、金融機関の「目利き力」が改めて問われそうだ。

日経 2019年09月11日朝刊

 

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