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不動産・住宅関連【新聞各紙記事スクラップ】

住宅用製材品 軒並み安 流通価格 米中での需要減映す 増税後にらみ販売競争

 木造住宅の梁(はり)や柱などに使う製材品の流通価格が軒並み下落した。欧州産の原料を使った集成材は米国や中国の需要が鈍った。経済連携協定(EPA)発効の効果や円高・ユーロ安も映して国内価格が下落した。競合する北米産米松を使った平角も国内最大手がシェア確保を狙って出荷価格を下げた分が浸透した。消費増税後の住宅需要に不安が強いなか、駆け込み需要のある足元で販売競争が激しくなっている。  指標となる集成平角(4m×10.5cm×30cm)の東京地区の問屋卸価格は8月末現在、1立方m当たり6万1,500円(中心値)と前月比1千円(2%)下落。値下がりは2016年3月以来、約3年5カ月ぶりだ。  集成平角の原料となる引き板材「ラミナ」は、欧州の輸出業者が対日輸出価格を下げている。足元では1立方m当たり240ユーロと、6月に比べ10ユーロ(4%)安い。  世界最大の需要国である中国が米国との貿易摩擦に伴う景気減速で需要が落ち込んだうえ、米国の住宅需要も鈍り始めた。二大消費国の需要減に欧州業者は戸惑った。「ラミナの国内在庫はそれなりに多いが、米中で売れないため日本側に少しでも買ってもらうため安値を提示した」(銘建工業=岡山県真庭市)  日本と欧州連合(EU)のEPA発効で、2月と4月に輸入関税が段階的に下がったうえ、円高・ユーロ安も下押し要因に働いた。  集成平角に連動して、柱に使う集成管柱(3m×10.5cm角)も1本1,895円(同)と前月比3%安く、15年5月以来の値下がりとなった。  一方、集成材と競合する米松製材品は、指標となる米松KD平角(4m×10.5cm×30cm)の東京地区の流通価格が1立方m当たり5万6千〜5万7千円と前月に比べて2千円(3%)安い。16年5月以来の値下がりだ。国内最大手の中国木材(広島県呉市)が4月と8月出荷分でそれぞれ1立方m2千円値下げし、流通段階に浸透した。  「競合する欧州産の集成平角の値下がりに対応した」(堀川智子社長)。集成平角への需要シフトを防ぎ、市場シェアを確保するのがねらいとみられる。原料の北米産米松丸太の値下がりで製品価格を引き下げる余地が生まれたこともある。  ただ、住宅需要の先行き不安感は根強い。  足元は10月の消費税引き上げをにらんだ持ち家や戸建て分譲住宅の着工件数が前年を上回るなど需要は堅調。学校や福祉施設などの「非住宅」向けも伸びている。  だが、市場では「増税後も非住宅は好調が続きそうだが、持ち家がこのまま堅調を持続できるか。先行きは不透明だ」(大手プレカットメーカー)との声が多い。需要家が必要な分量だけ調達する姿勢が強まっている。  第一生命経済研究所の小池理人副主任エコノミストも「今の着工増はあくまで駆け込み需要の影響で、これを除けば住宅着工は低調だ。今夏以降、着工戸数は大幅に減少する」とみる。今後の需要減をにらんだ販売読争の激しさが流通価格の下落を引き起こしている側面もある。

日経 2019年08月31日朝刊

 

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