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日銀 緩和は二段構え 長期金利の低下まず容認 追加緩和なら副作用対策

 日銀は景気の先行きや円高の進行を警戒し、二段構えで政策を運営する。まず長期金利が日銀の誘導幅の「下限」とされる水準を下回ることを容認し、緩和効果を保つ。そのうえでマイナス金利の深掘りといった追加緩和策を実行する場合、副作用を和らげる措置と一体で検討する構えだ。世界の中央銀行が利下げ局面に入り、大規模緩和が長期化する日銀は一段と難しい対応を迫られる。  日銀は前回7月の金融政策決定会合で、2%の物価安定目標の実現に向けた勢いが損なわれる恐れがあれば「予防的緩和」に踏み切る方針を明確にした。米連邦準備理事会(FRB)が主張する「予防的利下げ」に足並みをそろえ、日銀も緩和姿勢を強めたといえる。  トランプ米大統領が中国への追加関税「第4弾」を9月に発動すると表明した。FRBは7月に続き、9月にも追加利下げに動くとの見方が広がる。欧州中央銀行(ECB)も9月に利下げに踏み切る可能性がある。  海外を中心に景気の下振れリスクが強まっているのに加え、米国との金利差縮小を放置すれば、円高・ドル安が進みかねない。異例の大規模緩和が長期化する日銀は打てる手が乏しいなかで、まずは長期金利が日銀の誘導幅の下限とされてきたマイナス0.2%を下回 る展開を容認する。  日銀は2016年9月に「長短金利操作」を導入し、長期金利を「ゼロ%程度」に誘導するとした。黒田東彦総裁は具体的な誘導幅について「プラスマイナス0.1%の倍程度」と述べ、マイナス0.2%が下限との解釈が市場で定着している。ただ、黒田氏は6月に「過度に厳格にとらえるべきではない」とし、誘導幅を柔軟に運用する姿勢を示唆していた。  長期金利は26日、一時、16年7月以来の水準となるマイナス0.285%まで低下した。日銀は誘導幅を超える金利水準を容認し、事実上の「追加緩和効果」を広げた。  さらに、日銀は具体的な追加緩和策の検討も視野に入れる。マイナス金利の深掘りや長期金利の誘導目標の引き下げ、上場投資信託(ETF)などの資産買い入れの拡大といった選択肢がある。黒田氏は「これらの組み合わせや応用もある」と語っている。  もっとも、追加緩和策は経済への波及効果だけでなく、副作用にも目配りせざるを得ない。13年に始めた大規模な金融緩和の結果、日銀の国債保有額は市場全体の4割を超えた。ETFの購入で株式保有も東証1部の時価総額の5%弱に上る。  長引く超低金利は預貸金の利ザヤ縮小を通じて銀行経営に負の影響を与える。日銀の試算では28年度に約6割の地方銀行が最終赤字になりかねないという。  黒田氏は7月の記者会見で「追加緩和を検討する場合は、景気・物価へのプラスの影響と金融システムヘの副作用を総合的にみる」と述べた。市場では副作用対策として、日銀が銀行にマイナス金利で資金を供給したり、銀行が日銀に預ける当座預金のうちプラス金利の適用範囲を広げたりする案が取り沙汰されている。  SBI証券の道家映二氏は、プラス金利の適用範囲を広げれば「銀行の収益を補填できる」と話す。ただ、こうした措置は銀行への補助金と受け止められかねず「むしろ貸出金利への下げ圧力が強まる」(大手銀)との慎重論も根強い。政策のねらいを曲げずに打てる対策を慎重に検討する。 【決定会合 来月はFRBの後】  日銀が9月に開く金融政策決定会合は、米連邦準備理事会(FRB)と欧州中央銀行(ECB)が今後の金融政策を決める会合を開いた後の日程となる。FRBに先立って開催した7月とは異なり、追加の金融緩和の手段が多くない日銀が米欧の中央銀行の動きを見極めて対応を検討できる。  9月の決定会合は18〜19日。FRBが17〜18日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を開いた直後だ。9月以降に追加利下げや量的緩和政策の再開を検討するECBの理事会は12日を予定する。FRBが利下げを見送れば緩和カードを無理に切る必要はなく、仮に利下げしても内容を見て追加緩和の具体策を話し合える利点がある。  7月は日銀の決定会合が29〜30日、FOMCが30〜31日の日程だった。FRBの利下げによる日米金利差の縮小は円高圧力を強める恐れがある。  7月にFRBは10年半ぶりの利下げに踏み切ったものの、政策金利の下げ幅は市場の大方の予想通り0.25%。パウエル議長は長期の利下げ局面入りを否定したこともあり、結果的に翌日の円相場は対ドルで円安に振れた。ある市場関係者は「0.5%の利下げだったら円高が進んでいただろう」という。

日経 2019年08月27日朝刊

 

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