国土交通省は複数の棟で構成された団地型の分譲マンションの老朽化に対応するため、敷地を分割して売却しやすくする新制度を設ける方針だ。今は1棟だけを切り出して売る場合でも団地の所有者全員の同意が必要だが、この要件を緩める。跡地に店舗や保育所を誘致して団地としての魅力を高めるなど、多様な再生手法を選択できるようにする。空き家になっている部屋の所有者は売却で現金化しやすくなる。
国交省の調査によると同じ敷地内に2棟以上が集まり、50戸以上ある団地は全国に約5千カ所ある。築45年を超す団地は2015年時点で291と全体の6%程度だが、20年後には2,769と10倍近くに拡大する。住民の高齢化が進む一方、老朽化でバリアフリー化も遅れているため、再生が急務になっている。
ただ団地の全棟を一括で建て替える場合、全所有者の5分の4以上、かつ各棟の所有者の3分の2以上の賛成が必要だ。合意形成のハードルが高くあまり進んでいな
このため国交省は団地再生の新たな手法として敷地の一部を売却しやすくする。現状では分割・売却は対象となる棟の所有者だけではなく団地全員の同意がいるのでほとんど実施されていない。そこで同意の要件を緩めた新制度をつくる。
一部の棟を建て替える場合に必要な「団地全体の所有者の4分の3以上、かつ売却対象の棟の所有者の5分の4以上」との要件などを参考に具体案を詰める。2020年の通常国会に必要な法改正案の提出を目指す。
敷地の一部を売りやすくなれば、団地再生の選択肢が増える。老朽化が激しい棟の敷地を売り、跡地を保育施設に転換して子育て世代を呼び込んだり、商業施設で住民の利便性を高めて入居者を増やしたりする再生案を描けるようになる。
バリアフリーなど高齢者が暮らしやすい集合住宅を跡地に建て、団地に住む高齢者が敷地の売却代金を元手に移り住むといったプランも考えられる。売却先がみつからずに空き家になっている部屋の所有者は現金化できる可能性が広がる。
新制度は耐震性不足や老朽化による危険性がある建物を対象とし、管理組合とは別に所有者がつくる組合が売却する。一部の棟の住民が団地全体の意向に沿わない開発を進めることがないように団地再生の将来像を他棟の住民も含めて共有するよう求める方針だ。
ただ仮に「全所有者の4分の3以上」などに要件を緩めても大多数の住民同意が必要なことに変わりはない。実現にはなお高いハードルがあり、今回の新制度が老朽団地を再生する決定打にはならないとみられる。
民間からは建て替えなどの同意要件を一段と緩めるよう求める意見もあるが、「財産権の侵害につながりかねない」と反対論も強い。団地に住まずに空き家にしている所有者については一定の条件のもとで同意したとみなすなど、再生事業を後押しする一段の工夫が必要になりそうだ。
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